大学2年の春休み。
機械を組み立てる工場で、幼なじみの薄いハムと2人で派遣バイトで働いてました。
規模の大きな芝刈り機なんかを造る工場なんですが、実際働いてビックリ。
従業員の4割はブラジル人なのです。
ブラジル人の女の子のプリプリしたおしりを見た時、僕のテンションはもう陽気なサンバです。
でも機械には日本製と明記されてました。
メイドインジャパン。
ホントはメイドイン6割ジャパン。
じゃあ仮にイタリア人が働いてるブラジル圏の工場で作った物はメイドイン何になんだ?
イタジル?
とにかく、外国人と働くなんて初めてなもんで、典型的ホリの深い人コンプレックスの僕はビビってました。
実際言葉通じません。日本人である班長はいったいどうやって仕事教えたんだ?
そんな疑問を抱えながら、僕と薄いハムはバイトしてました。
一ヵ月が過ぎたある日のことです。
薄いハムがいきなりリストラされました。突然の事でパニックってたら、同僚のジョンという若者が「眼鏡をかけたバカな彼は機材にボンドを塗りすぎて、上司に超怒られてた」と爆笑しながらジェスチャーで教えてくれました。
ジョン、そのバカな眼鏡の彼は僕の15年来の親友だよ。
本当に薄いハムはボンドを塗りすぎたのか?
通気ダクトの内側にへばりついてるガムはいったい何者の仕業か?
ジョンが仕事中歌ってるのはエミネムか?
ん? エミネム?
僕はエミネムが大好きです。というよりヒップホップやレゲエが大好きです。
ジョンに、ヘタくそなショーンポールを歌ってみると、彼は喜んで一緒に歌いだしました。
そう、ブラジル人だけあって彼もヒップヒップが好きだったのです。
それがきっかけで、僕はジョンと仲良くなりました。
言葉の壁はあるけど、僕達にはヒップホップという魂の言葉があります。
それに、ジョンは時々片言の日本語で話かけてくれました。
「ナンダヨコノヤロウ」
「ナニミテンダバカヤロウ」
ね? 僕と仲良くなろうとする気持ちが伝わります。
ちなみに真顔で言ってきます。つうか誰が教えたんだ。
僕も笑顔で「黙れチビ眉毛」とか言ってました。もちろん通じてません。
根気よくコミュニケーションをとてみると、色々分かりました。
僕が職場ではじめに見て興奮した、サンバなおしりの持ち主がジョンの彼女でした。
ジョン実は15歳でした。日本にはサッカーの留学で来てる事も判明。
15のくせに、あのおしりで毎晩サッカーですか。
こうして、二ヵ月目で春休みが終わり、僕は仕事を辞める事になりました。
初めての海外の友達、ジョンともお別れしました。
しかし、後から知りました。
薄いハムの失敗は、実はジョンの仕業だったこと。
通気ダクトのガムはジョンが付けていたこと。
ジョンの名字がパパスだったこと。
それでも憎めない、良い奴でした。