ある夏にホストクラブに行きました。
 
馴染みの女友達と飲んでいて、ノリでホストクラブに。


片田舎の小さなホストクラブで、キャストのルックスは、
 

(俺、働けるな)

 

って感じでしたが、やはりプロなので楽しく飲ませてくれました。


恐らく暇だったんでしょう、出勤してるキャスト全員が着いてくれて、総勢10人くらいで飲んでました。

 

満場一致でその場で僕が「一番おもしろい」と言われました。
 

僕もそう思いました。
 
「働いてくれ」とも言われました。

 

きっと営業トークでしょう。

 

えぇ、わかっています。

 

わかっているけど調子に乗って本気で働こうかと思いました。
 
店長さんを紹介してもらいました。

 

僕は奥から出てきた人を見て、
 

(うぅわ、何か玉手箱を100回開けた浜崎あ〇ゆみみてぇな汚いババア来た!)
 

と思ったらオネエでした。
 

ホストの店長オネエ。僕、大爆笑。
 
そこからも楽しく飲んでると、連れの子が悪酔いし始めました。

 

その子は彼氏が元ヤンばかりで、本人も元ヤンと言うと「違う」と言いながら喜ぶような、昔から飲むと泣いたり殴ったり投げたりする子です、それを僕は忘れていたのです。
 

彼女は突然、僕に全力投球のビンタをかましました。
 

えぇ、それでも僕は笑顔でしたよ。
 

その後散々僕をひっぱたいて、トイレに行きやがりました。
 

僕はすかさず会計を済ませ、その子を置いて帰りました。
 

そう、僕は怒っていたのです。

 

何も悪いことしてないのに、殴られて、笑顔で我慢していたけど、心の中では怒りという名の炎が、うん、まぁすごい事になってました。


少し前の僕ならビンタされた瞬間に、女だろうが「ジャンプ強キック立ち強パンチ昇龍拳!」と大声で叫んでビックリさせますが、そのときの僕はちゃんとコンドームをつける優しい大学生です。


しかし彼女の酒癖が悪いのを僕が忘れていたように、僕を怒らすとどうなるか、彼女は忘れていたのです。
 

彼女は踏み込んではいけない、禁断のドアをトイレを開けるみたいに気軽に開けてしまったのです。
 
ちなみにそれ以来2年くらい電話もメールも無視しました。


彼女がその後どうなろうと知ったこっちゃありません。ドンペリ注文してカケして取り立てられてしまえ。とか思いました。


そんな感じで、性格の悪さ全開で、店を出る時、店長さんにある言葉を言われました。

 

唇の端から煙を吐き出し、たばこ片手に言われたその言葉は、今でも忘れません。
 
「短気は損気ですよ、お客さん」
 
なんか本当に働いてやろうかと思いました。