僕の友達にコウちゃんというヤンキーがいました。
優しく、曲がったことがキライな少し前の少年チャンピオンの主人公みたいな人でした。
今日はそんな彼のお話をします。
ただの友達自慢なので、おもしろさは期待しないで下さい。
おもしろさを期待してる人は、まず鏡を見て下さい。
ほら、おもしろい。
高校時代、一人暮らしをしていた僕の家に、彼が「泊まり行ってもいいか?」と訊いてきました。
もちろん心良く彼を迎え入れました。
ところが彼はまず、僕の家から一番近い駅に行き、高校までの定期券を買ったのです。
1ヵ月分。
こうして見事に1ヵ月間、コウちゃんは僕の家で生活しました。軽く引きました。
3DKの一室を改造して住みつき、彼女とメチャクチャな喧嘩してました。僕の家で。
でも2人で1杯のカップラーメンをゆずり合って食べた日もあります。
そんなある日、彼と一緒に帰っていると、駅が騒がしくなっています。
事故で電車が止まっていたのです。
駅にはたくさんの女子高生や大学生、それに女子高生がいて、騒然としていました。
待ってる間、僕は可愛い子をめっちゃ見てました。
コウちゃんは、どこぞの男性が駅員さんに八つ当りをしているのをめっちゃ睨んでました。
男は調子に乗って、駅員さんに大声で怒鳴ったり、物を投げたりする乱暴者でした。
電車に乗れずイライラするのはみんな同じ気持ちですが、迷惑な人です。
「アッホだねー、コウちゃ……」
と言いながら、となりにいたコウちゃんを見たら
(アレ? いねぇ)
コウちゃんいません。
もう一度、駅で騒いでいる乱暴者を見ると、奴の後ろにコウちゃんがいました。
「オメー迷惑なんだよ! 引っこめバカ!」
と怒鳴りましたよコウちゃんが。
周りには200人近くの野次馬がいます。
乱暴者も何か言ってましたが、悪者は彼です、さすがに空気を読んで消えました。
わかります? この空気。
コウちゃんは迷惑な乱暴者を追い払った勇者なのです。
まわりの女子高生は彼に釘付けです。
「カッコよくね?」的な声もホントに聞こえました。
実際彼はタッキーとタッケー(竹内力)を足して割ったような、肌の黒いイケヅラでした。
そりゃもうヒーローわっしょいですよ。
僕はすかさず彼の元へ行き(みんな、僕、友達だよ)みたいな、いやらしい振る舞いをしました。
それから15年後の今、互いに家庭を持つようになりましたが、彼とは今も親友です。