こんにちは。KARAが解散したことを昨日知った岡田です。

引き続き今いる業界についてお話しようと思います。

基本的に、読者の方は「ふーん、書き手ってこうなんだ」と一つの職業のお話を覗いて頂き、同じ業界の方はプロアマ問わず、何かプラスになるものを持って帰って頂ければ幸いです、という気持ちで書いているので「何かちげーよ!」と思ったら、まあ好き放題コメントにでも書いてください。

ちょっと長くなりそうなのでまずは前編とします。

【マンガ原作にシフトするWEB小説業界 前編】

はじめに、「エブリスタ」や「小説家になろう」、「カクヨム」「野イチゴ」あと最近の媒体もわからないのであったら教えて欲しいくらいですが、いわゆるスマホ小説、携帯小説と呼ばれる媒体をここでは「WEB小説」と総称しています。

また一人の小説家・漫画原作者の視点としてのコラムになるので、ここで述べている以外にもあらゆる方の努力・やさしさ・ご寵愛と、多様な視点があることを予めご了承ください。

【そもそもマンガ原作者って何?】

僕は自分のことを、例えば保険に入るときなんかは肩書を「作家」と書きますが、仕事を受ける際などは「小説家・漫画原作・シナリオライター」と言います。

妻の友人に自己紹介するときなんかは「小説書いてます」とか「奴隷区の原作者です」と言います。

すると大抵「漫画家さん?」と聞き返されるので、世間での「漫画原作者」という職業の認知は決して高くないと思います。

漫画原作者の役割をカッコよく一言で言うと、マンガのブレイン(脳です)。漫才で言えばボケでもツッコミでもなく、そのネタを作る人間です。

それでいくと皆さんの目に最も入るキャラクターや背景など、絵を描いている作画(漫画家)さんは筋肉、骨、心臓といったルックスを含む脳以外のすべてであり、例えば編集さんや営業さんは僕らの仕事の仕方やマンガそのものをデザインするトレーナーでありコーチでありマネージャーでもあります。

個人的には、一冊のマンガにおいて、花形は漫画家さんであり、僕らは影の仕事人だと思っています。(結構ずいずい前に出ていますが)、その役割の比率は〝掛け替えのない1%〟です。

残り99%を形作っているのは、漫画家さんであり、編集さんであり、詰まるところ読者の皆さんでもあります。

「1%なら楽そうじゃん」と言われたらそうでもありません。オーケストラにおけるシンバルのように、叩く回数は数回でも、責任は指揮者と同じように重大です。

【マンガ原作のお仕事】

台本のような脚本・あるいはマンガの設計図であるネームを作ります。

ビル建設で例えると、建設する土地が出版社(媒体)であり、その地にどんなビルを建てるかを設計して、詰まるところだと色の指定や内装の趣きの指定、骨組みを組むまでが原作者のお仕事です。そこから漫画家さんが実際に組み立てるのが基本です。

媒体にもよると思いますが、編集さんは双方のその仲介をしつつ、ビルを俯瞰(天上から客観的に見張るイメージ)で確認して、指示を出します。さらにこのビルにどんなお客さん(読者)を招くかなども原作者と編集さんのお仕事かもしれません。

よく聞かれるのが「儲かるの?」というお金の話ですが、当たり前なのが売れないと儲かりません。別のお仕事しながら兼業でやってる方も多くいると思います。

多分、漫画原作者という肩書きで、漫画が1冊10万部売れた場合、これは文筆業界では大成功ですが、年間では30代サラリーマンの年収よりやや低いくらいです。

ただそこからこの仕事のメリットにあたるのが、例えば月刊誌でも2年間でおよそ5冊出せるので、これによってサラリーマンの2年間の収入の2倍を超える計算になります。(出版社や契約内容にもよるので目安程度に受け取ってください。)

ただし当然、漫画は1巻よりも2巻にかけて徐々に売り上げが下がっていくので、そううまくいことばかりではありません。

そして売れる漫画を書く方法なんて僕が知りたいくらいなので、売れるまでも売れてからも死闘であることは強くお伝えしておきます。

売れるお話はまたいつかさせて頂ければと思いつつ、さらにここで漫画原作の強みなのが、複数の仕事を容易に受けられるところです。

【マンガ原作業のメリット・デメリット】

僕は2015年と16年、ピーク時は、まったく別の小説と漫画作品を5企画同時に進めていました。

多分、育児しながら派生ではなく別の商業企画を5作品同時進行した作家は、今現在の日本でも東村アキコ先生くらいだと思います。(原作担当ではないし他にもいらしたら教えてください。)

他の専業の漫画原作者さんにおいても、同時に3作品動かしている漫画原作者さんなんかはざらで、人気シリーズの派生作品を6作品執筆しつつ、小説や他の作品も書いてる方もいます。いずれも今現在も、水面下ではもっと書いていると思いますが、結果として漫画原作の執筆は(気合いと運があれば)複数進められます。

ただ個人的にはあんまりこの複数連載は、特に新しくこの仕事をする方にはおすすめしません。僕は川端康成の「文章は命のペン先に血をつけて描く」という言葉が好きなのですが、小説・漫画問わず、一筆入魂に勝る執筆の姿勢はないと思います。

デメリットとして、一つの作品に向き合う時間が減ってしまうのと、今の時代は読書や資料制作はもちろん、SNSの繋がりや市場調査など、執筆以外の時間も大切だからです。

僕自身も現在、ウエポンギーク、異能メイズ、大奴隷区という漫画作品の原作執筆に加え、近々長編小説の刊行を予定しています。

これは長い時間の中で書き溜めた作品も断続的に書籍にさせて頂いたり、水面下で数年単位の打ち合わせを繰り返して、多くの準備期間を経て複数の連載に至る場合がほとんどです。ありがたいことに仕事を入れようと思えばさらに入れられますが、現状の執筆作業はここでストップすることにしました。

その代わり、それぞれの作品のコミックが出たときなど、書店への営業やSNSでの宣伝作業などに力を入れて「ちょっとだけ営業ができてフットワークの軽い原作者っていうか何でもやる人」という自分の付加価値を大切にしています。

これは、自分より文章がうまい小説家や、自分より安定感のある脚本を書ける原作者はいるけど、自分だけにしかない能力は何だろう? と考えたときに、「作品を売るバイタリティ」、そして「どんなピンチにも笑いながら絶対に諦めない執念」にあると自己診断して行き着いた、社会人としての一つの価値でした。

話が少しそれましたが、このように漫画原作は複数の企画を進めやすいというメリットと、頑張ってる岡田がいます。

かなり長くなってしまったので前編はここまです。

 

次はいよいよ「マンガ原作の現在と未来編」です。続きます。