ども、久しぶりにちゃんとした焼き肉屋で肉を食った岡田達也です。

 

 

 

 

仕事を終えて帰宅した。

 

 

当たり前のことだけど、労働するとそれなりの疲労を伴う。

 

それは頭を使う仕事でも、体を使う仕事でも同じ

 

疲れることなくお金を稼ぐことは不可能と言っていい。

 

その日の私もしっかりと疲れていた。

 

 

だがしかしーー

 

疲れているからと言ってバタンと倒れこむわけにはいかない。

 

我が家には

 

腹を空かせて餌を待っているひな鳥

 

ちがうか……

 

老人鳥

 

あ、鳥じゃなかったな

 

前世が殿様だった我が父・隆夫さん(89)が、

 

口を開きながら「餌はまだか?」と待っている。

 

そう、晩飯の支度をしなければならない。

 

今からは「台所番」としての仕事が待っている。

 

急がねば。

 

 

「ただいま」

 

「あぁ、お帰り」

 

「今から夕食の支度ーー」

 

「あのなぁ」

 

「?」

 

「(自分が座っている)ソファの下に、乾電池と鉛筆のキャップが落ちたみたいでなぁ」

 

「……」

 

「……」

 

 

私は声を大にして言いたい。

 

「で?」と

 

この殿様、ここから先の言葉がないのだ。

 

普通に考えれば

 

「ソファの下に、乾電池と鉛筆のキャップが落ちたみたいでなぁ。悪いが拾って(探して)みてくれ」

 

というお願いのセンテンスが必要なのではないか?

 

いくら家族といえども、だ。

 

少なくとも私はそう考える。

 

「ソファの下に落ちた」というのはただの報告でしかない。

 

 

だがーー

 

私は甘い人間だ

 

私の肩書は下々の者だ

 

それに「拾ってとお願いしてほしんだけど」なんて言ってる時間が惜しい

 

一刻も早く台所へ行きたいし

 

 

私は、

 

帰宅して10秒と経たないのに、

 

床に這いつくばり、

 

ソファの下をのぞいた

 

少しだけ涙がこぼれそうになりながら。

 

 

のぞいた瞬間、頭の上から殿の声が降ってきた。

 

「あったかえ?」

 

 

まだ1秒と経ってね~よ

 

だまって待ってろ、じじぃ

 

 

「電池はあるね」

 

「キャップは」

 

「ないよ」

 

「そんなはずないで!」

 

「だってないもん」

 

「ソファの下に落としただけどなぁ!」

 

「見当たらないけど」

 

「暗くてよぅ見えんじゃないか?」

 

 

うるせ~よ

 

ちゃんとスマホで照らしてるっつ~の

 

 

「いやいや、明るくして見てるけどないな」

 

「おかしぃなぁ」

 

 

電池を拾い立ち上がった。

 

と、

 

テーブルの上に鉛筆のキャップが置いてあるではないか……

 

おそらく

 

落としたのではなく、外して自分で置いたのだろう

 

 

「キャップ、ここにあるじゃない」

 

「あっ!」

 

「……」

 

「落としたんじゃなかったか!」

 

「……」

 

「お父さんが自分で置いたんか?」

 

「……」

 

「あっはははははははははははははは」

 

 

 *

 

 

おおおおおぉぉぉぉぉぃぃぃぃぃいいいいい!!!!!

 

おおおおおぉぉぉぉぉぃぃぃぃぃいいいいい!!!!!

 

おおおおおぉぉぉぉぉぃぃぃぃぃいいいいい!!!!!

 

 

おまえは黄門か?

 

黄門さまなのか???

 

何を気持ちよく高らかに笑ってんだよっ???

 

笑うとこじゃなくて謝るとこだろ~がよっ!!!

 

こっちはなぁ!

 

疲れてるのになぁ!!

 

帰宅して10秒で床に這いつくばって!!

 

泣きながら乾電池拾って!!

 

「見当たらない」って言ったら逆切れされて!!

 

高笑い聞かされて!!

 

それでも今から夕食の支度するんだぞ!!!

 

俺に対する感謝の念がまったく足りてないんですけどっ!!!!!

 

 

 *

 

 

大丈夫だ

 

いつものことだ

 

これが我が家の日常だ

 

 

「やってもらって当たり前」という気質の上に、

 

最近は指先の感覚が鈍くなってきてるようで、物が上手につかめないらしい。

 

もうこればかりは仕方がないことだからフォローはする。

 

 

だけどなぁ、と思う

 

家族と言えども感謝の気持ちはあった方がお互いに過ごしやすいのになぁ、と

 

ま、

 

親は子を選べないし

 

子は親を選べないし

 

私は今日も這いつくばりながら、元気に生きていこうと思う。

 

 

 

 

では、また。