ども、麻婆豆腐にむき枝豆を入れるのが好きな岡田達也です。
我が父・隆夫さん(88)は、昨年8月コロナに感染し入院。
一時は生死の境をさまよっていたが、
病院スタッフさんたちの看護・介護・リハビリのおかげでV字回復し、
3月上旬、自宅へ帰還した。
現在はデイサービスを利用中。
デイサービスに行くとき、隆夫さんは小さなトートバッグを持って行く。
その中身はーー
『通いノート』という、デイと家族との連絡帳的なもの
お気に入りのクロスワードパズル
鉛筆、筆ペン、消しゴムなどが入ったペンケース
30倍率、LEDライト付きのどでかいルーペ
集音器
テッシュとハンカチと現金3千円が入ったポーチ
以上がお出かけセットだ。
……トートバッグの中にわざわざポーチが入ってるんだぞ?
すげ~だろ?
テッシュとハンカチなどわざわざポーチに入れる必要も無いと思うのだけど
この伊達男、この辺りに変なこだわりがあって
“ちょっと洒落た入れ物と、ちょっと洒落た帽子がないと、出かける気にならない”という性分なので黙って持たせている。
で。
そのトートは昔ダイソーで購入した物だったんだけど、長いこと使ったおかげで不織布が擦れてしまい、ずいぶん貧乏くさくなってしまった。
こじゃれた殿様にそんなバッグを持たせるのは忍びないので、適当なトートを探していた。
かなりの日数を要したけど、ようやく別の100均で良さげな物を見つけたので購入した。
(とはいえ300円もする品だぞ)
持ち物に名前を書くのは鉄則だ。
表面と裏面にマジックで名前を書いた。
「これ、新しいバッグを買ったから。明日からこれで持って行って」
「新しいバッグ?」
「うん」
「ええのに~よ~!」
「いやいや、前のヤツはずいぶんくたびれてたから」
「まだ使えるのによ~!」
……なぁ?
なぜ素直に「ありがとう」と一言言えないのだ?
この天邪鬼、いい加減なんとかならんのか??
「周りの人に「岡田さん、あんなバッグを持って。貧乏なんかな?」って思われるのイヤでしょ?」
「……そうか」
「うん」
「じゃ、持って行こうかな」
「……(はやいな)」
数時間後。
隆夫さんはかなり気に入ったのだろう。
新しいランドセルを買ってもらった子供のように新しいバッグを触りまくっていたが、
突然、僕に向かって
「前使ってたバッグのコレ、新しいバッグでも使えるかいな?」
そう言って底板を渡してきた。
このように書くと普通の会話のように読めるだろうが、そうではない。
これを紐解くと、
「誰か、誰か、おらぬか。余は新しいバッグにも底板がほしいぞよ。底板がなければ出かけないぞよ。いかに欲しいかを民にわからせるために、デモンストレーションとして前のバッグの底板を持ち出してみたぞ。これをお主に渡すぞ。ということはお主がなんとかするのだぞ。これで十分伝わるだろ。これでわからないようなら打ち首獄門だぞ。よきにはからえ」
ということになる。
(……ちょっと盛ってないか?)
たった一言でいいのだ。
「底板を用意してくれ」と言ってくれれば、喜んで用意する。
俺だって鬼じゃない。
しかし、いかにも「自分でやりますよ、やる気はあるんです」という香りをまき散らすのが気に入らない。
ま、今に始まったことじゃないしーー
下々の者(当然私です)は
演劇人の必殺技「段ボールをガムテでグルグル巻き」を炸裂させて、見事な底板を作った。
隆夫さんは昨夜のうちから、一生懸命バッグの中身を整えていた。
忘れ物をしないためにも前夜に準備するのは大切なことだ。
ってことで、本日、新しいバッグがデビューします。
では、また。
追伸
オンライントークショー『東京砂漠』
次回は4月14日21時30分スタートです!