ども、タルタルソースが大好きな岡田達也です。

 

 

 

 

我が父・隆夫さん(88)は

 

昨年8月コロナに感染し入院

 

一時は死の淵をさまよっていたが

 

病院スタッフさんたちの手厚い看護・介護・リハビリのおかげでV字回復し

 

残念なが……

 

喜ばしいことに、先月の頭に自宅へ帰還した。

 

現在はデイサービスを利用しながら元気に暮らしている。

 

 

他のデイサービスがどれくらいの規模なのか知らないけど、

 

今通っているデイは利用者さんの人数を意識的に絞っているとのことだった。

(サービスが行き届かなくなるのを防ぐためだそうです)

 

その手厚いサービスのおかげだろうか?

 

利用前の話し合いで、隆夫さんの食の好みを訊かれたとき

 

「魚と煮物と柔らかいご飯がきらい、肉と揚げ物と焦げたものと固めに炊かれたご飯が好きです」

 

と正直に答えておいたところ、

 

用意してくださる昼食にはほぼほぼ魚が出ないという。

 

確かめたわけじゃないけど、利用者の好みに合わせてくださっている可能性はある。

 

 

「良かったじゃない。きっとお父さんの好みに合わせてくれてるんだよ」

 

「そうかなぁ~」

 

「訊いてみないとわからないけど。それでも煮魚が出るよりはいいでしょ?」

 

「それは、まぁなぁ」

 

「ほら」

 

「〇〇(先月まで入院していた病院)は、魚ば~っかりだったけなぁ!」

 

「……」

 

「魚、魚、魚だけなぁ!」

 

「……いや」

 

「魚しか見んかったけなぁ!」

 

「がんばってそれを食べたから生き返ったのかもしれないよ」

 

「でもなぁ」

 

「なに?」

 

「今はハンバーグがよう出てくるだが」

 

「いいじゃない、ハンバーグ?」

 

「だけど、しょっちゅうハンバーグだで」

 

「好きでしょ、ハンバーグ?」

 

「だけど、しょっちゅうハンバーグだで」

 

「……」

 

 

たしかにハンバーグが出される頻度は高いようだ。

 

だけど、もしも好みに合わせてもらってるのだとしたら有り難いと思う話であって、ボヤくところではない。

 

 

「ハンバーグはあれかなぁ、安く作れるからかなぁ?」

 

「いや、それはわからないけど。さっきも言ったけどお父さんの好みにあわーー」

 

「他の物も出してくれりゃええのになぁ」

 

 

……聞けよ、俺の話

 

 

「違うメニューも出てるじゃない?」

 

「他の物も出してくれりゃええのになぁ!」

 

 

……僕も老人になったら人の話を聞かなくなるのだろうか?

 

神さま、お願いです

 

いい子にしてるので人の話を聞ける人間のままでいさせてください

 

 

「他の物って、例えば何?」

 

「カキフライ」

 

「……」

 

「カキフライが出てくりゃええのに」

 

 

ねぇ

 

ねぇねぇ

 

ねぇねぇねぇねぇ

 

即答ですか?

 

カキフライ一択ですか??

 

それってカキフライが食べたいだけですよね???

 

さすが稀代の殿様

 

自分の欲にはどこまでも正直なんですね

 

 

「あのさ」

 

「なんだ?」

 

「牡蠣って安くないしね」

 

「そうか?」

 

「うん。それに冷凍食品ならともかく手仕込みは大変なのよ」

 

「そうか?」

 

「揚げ物は何だって大変なんだから」

 

「カキフライ出てくりゃええのに」

 

「……聞いてる、人の話?」

 

 

 *

 

 

翌日の夕食

 

スーパーで立派な牡蠣を買ってきて、カキフライを作った。

 

もちろん、達也シェフの手仕込みだ。

 

衣はバリッとして、牡蠣のうま味を閉じ込めた、見事な仕上がりとなった。

 

我ながら大満足の出来だった。

 

これでしばらくは「カキフライ、カキフライ」と言わないでいてくれたらいいのだが……

 

殿様というのは本当に手がかかる生き物だ。

 

 

さて、

 

明日もカキフライにまつわるお話を。

 

 

 

 

では、また。