ども、週3でヤングコーンを食べている岡田達也です。

 

 

 

 

我が父・隆夫さん(88)は

 

昨年8月コロナに感染し入院

 

一時は死の淵をさまよっていたが、

 

病院スタッフさんたちの手厚い看護・介護・リハビリのおかげでV字回復し、

 

今月の頭に自宅へ帰還した。

 

 

今は週4日、デイサービスを利用しており、

 

デイに行かない日は我が家に訪問看護に来てもらっている。

 

さらに週2日は理学療法士さんが我が家に来て、

 

40分ほどのリハビリ運動を指導してくださっている。

 

 

 *

 

 

隆夫さんは、元々歩くのが大嫌いな人だ。

 

若いときの肺結核のせいで肺が片方ないこと、

 

心筋梗塞を経験していること、

 

88歳まで喫煙人生を送ってきたこと、など

 

「息が上がるのに十分な材料が揃っている人」なので

 

そりゃ歩くのもしんどかろう。

 

 

とはいえ、口では

 

「歩かないけん!」

 

「健康のために歩かんとなぁ!」

 

と、「歩きたい気持ちはいっぱいありますアピール」が強いので、実にうっとうしい。

 

 

入院前、パチンコ屋まで車で送迎すると

 

「今日は店の前じゃなくてあそこで降ろしてくれ! 歩かないけんけなぁ!」

 

と、ドヤ顔で指差した先は

 

お店から10メートルほど離れたポイントで

 

どう歩いても1分とかからない距離だった。

 

私にはどう見ても「歩いた」と言える距離ではないのだが、

 

隆夫さんにとっては東海道くらいの長さなのだろう。

 

 

気持ちはいっぱいありますアピールが、この人の得意技なのかもしれない。

 

 

 *

 

 

昨日

 

我が家にリハビリ担当のスタッフさんが来られた。

 

ものすごく明るくて、元気がある女性のYさん。

 

初めてお会いしたときに「私は諦めが悪い人間なんで頑張ってもらいますよ!」と隆夫さんに言い放ったのを見て、

 

「やっちゃってください」と心の中で期待していたのだけど、

 

毎回、期待通りの活躍をしてくださっている。

 

 

「岡田さん、今日は新しいマシンを持ってきたんですけど」

 

そう言ってYさんが出してきたのは、車いすに乗ったままペダル漕ぎができるエクササイズ器具だった。

 

「これを漕ぐんですか?」

 

「そうです。まずは50回、漕いでみましょうか」

 

隆夫さんは心底驚いた様子だった。

 

「ご、ご、ごじっかいもですか???」

 

「そうです。他のみなさんもやっとられますよ」

 

プライドをくすぐられて、すぐにええかっこしいが登場した。

 

「じゃ、私は5分くらい漕がないけませんなぁ! グフェフェフェフェ(笑)」

 

Yさんは真顔で言った。

 

「えぇ、やってもらいますよ」

 

渾身のジョークが流されて隆夫さんは慌てた。

 

「……いや、でも、5分は長くないですか?」

 

「10分漕ぐ人もおられるんでねぇ」

 

「……いや、でも、この前無理はせんでええって言ってましたよね?」

 

「無理はしなくていいです」

 

「ほら」

 

「でもね、多少の無理をしないと良くならないんです」

 

「……」

 

「無理がない運動だけしてても良くならなんです」

 

「じゃ、10分漕がないけませんな、グフェフェフェフェ(笑)」

 

「はい、やってもらいます」

 

「……」

 

「最終的には10分、漕いでもらいますから」

 

「き、気持ちはね、あるんです!」

 

「はい」

 

「本当に、動かないけんとは思っとるんです!」

 

「じゃ、やりましょうよ」

 

「いや、まぁ、そうなんですけど、なんというか、息が上がるというかーー」

 

「意気が上がったら休めばいいんです」

 

「……」

 

「無理しない程度に無理をする」

 

「……」

 

「じゃ、やりましょうか!」

 

「いや、でもーー」

 

「岡田さん!」

 

「は、はい」

 

「余計なことしゃべって、無駄に血圧を上げたくないんです!」

 

「……」

 

「じゃ、漕ぎますよ!」

 

「はい」

 

 

 *

 

 

“溜飲が下がる”とはこのことだ。

 

Yさんのスパルタ指導は、

 

隆夫さんの甘えた気質を許さない厳しさがある。

 

これからもビシビシやっていただきたい。

 

 

唯一、心配なのは……

 

このリハビリによって

 

隆夫さんがさらに回復してしまうことだ。

 

 

ん~

 

とても複雑な心境

 

 

 

 

では、また。