ども、ゆで卵は半熟にかぎる岡田達也です。
我が父・隆夫さん(88)は、
8月末にコロナに感染し緊急入院した。
現在、介護医療院にて療養・リハビリ中。
三途の川を渡り損ねた父は
幸か不幸か、退院が見えてきた。
*
2月23日の日記で、以下のような文章を書いた。
リンクを貼るのではなく、まるまる文章を載せておく。
なぜならーー
心して、もう一度目を通していただきたいから。
*
先日、病院に行ったとき、隆夫さんが言った。
「もう、差し入れはええにしよう!」
「ええにしよう」は鳥取弁で「やめよう」という意味だ。
つまり「もう何も持ってこなくていい」ということ。
「えっ、大丈夫? まだ何か残ってる?」
「ヨーグルトが3つとなぁ、ドーナツももう少し残っとるし!」
「ふりかけは?」
「ええ、ええ! 十分だろうやぁ!」
「余ったら家に持って帰ればいいだけだから、買い足してもいいんだけど」
「いや、これで間に合うで! もう買ってこんでええ!」
「いや、だけどーー」
「ええ、ええ!」
「でもーー」
「ええ、ええ!」
ここまで読んで
「達也さん、ちょっとしつこいんじゃない? 本人が要らないって言ってるんだから引き下がりなさいよ?」
と思ったあなた
あなたはまだ私のことを理解できていないようだ。
言っておくが、
私は、隆夫さん以上に、隆夫さんのことを知っているーー
ヨーグルト3個とたまご煎餅少々で、3月の頭まで持つはずがない
食べることしか楽しみがない人だ
それはけっして悪いことじゃない
だから今日リクエストしておいてくれれば、
こちらも気持ち良く買い物に行って、
次回のお見舞いのときに持ってくることができる
だけど、きっとそうはならない
今日は「もう要らない」と言っておいて、
後日メールで「〇〇と〇〇が欲しい」って連絡が来るに決まってる
未来はそうなる
なってしまう
それが嫌なのだ
だから何度も念押ししているのだ
もちろんそれは私自身の精神衛生上の問題なので、
追加発注があったところで
「はいはい、わかりました」
と言っておけばいいだけなのも理解している
だけど、
生き急ぐ私にこんな無駄なやり取りしている時間は必要ない
なぜ、今、言えないのだ???
*
昨日、隆夫さんからメールが届いた。
「次回にお願いします、
髪の毛カット
振りかけ 1
煎餅 1
以上です」
やれやれ……
やっぱりこうなるんだよなぁ
あまりにも予想通りの展開にうなだれながら、買い物に行った。
帰宅してスマホを見ると、さらにメールが届いていた。
「カルピス、ド-ナッ完食、しました
ド-ナッ後1袋で終わりに、します、後振りかけ1袋これで終わりにします、カルピスは2本で終わりにします、」
おい
おいおい
もしもし
もしもしもしもし
怒りを堪え返信した。
「メールの確認です。
先日、病室で「もう何も要らない」ということでしたが、その後のメールで「ふりかけとたまご煎餅を一袋ずつ」と書いてあったので、一応それは購入しました。
それとは別に「ドーナツ」「ふりかけ」「カルピス2本」を追加ということでしょうか?」
返信があった。
「今リハビリ終わり、冷蔵庫を再確認しました、冷蔵庫には、ヨーグルト3個のみです残り滞在期間12日として煎餅1カルピス1ヨーグルト3個で差し入れは終わりとします、足りなくなっても、我慢しますのでしゆうりようとします
この日の日記では、
この後、私の怒りが爆発して幕を閉じたのだけど……
*
なんだかんだ言いながら、
その日、私はリクエストの品をすべて揃えて持って行った。
そこで繰り広げられた会話はこうだった。
「差し入れ、食堂に置いておいたから」
「おおっ、ありがとな!」
「この先はもう何も要らない?」
「いらん、いらん!」
「ホントに?」
「もし煎餅がなくなっても、ふりかけがなくなっても我慢するわよ~!」
「じゃ、もう何も買わないからね」
「買わんでええわよ~!」
*
その二日後
日曜日の夕方
隆夫さんからメールが届いた。
「追伸
29日に煎餅1お願いで差し入れ終わりとします、長かった差し入れ有り難う🎵
お休み😌🌃💤」
*
……
……
みなさん、どう思います?
もしかすると隆夫さんがボケ始めたのでしょうか?
それとも私の忍耐力が試されているのでしょか?
それともただのデジャブなんでしょうか?
つかぬことを伺いますが
「舌の根の乾かぬ内」っていうのは、どなたが考えた言葉なんでしょうか??
いい言葉ですよね
どなたか私の代わりにたまご煎餅を届けてやってもらえませんか?
えっ?
そうですか
そうですよね
やはり私が持って行かなくてはダメですよね
*
前言撤回します。
「私は、隆夫さん以上に、隆夫さんのことを知っているーー」
と書きましたが、
「私は、まだまだ隆夫さんのことを知り尽くしていないーー」
に変更させてください。
では、また。