ども、炊き込みご飯が大好きな岡田達也です。




我が父・隆夫さん(88)は、

8月末にコロナに感染し緊急入院した。

現在、介護医療院にて療養・リハビリ中。


三途の川を渡り損ねた父は

退院が、見えてきた。


 *



昨日のつづき。


 *


隆夫さんからメールで「豆ごはんの塩の分量」を問われたのが

 

私の誕生日である13日。


その二日後

15日の14時ごろ、お見舞いに行った。

隆夫さんは病室にいなかった。


あぁ、そっか

この時間はリハビリだったっけ?

じゃ、ベンチで待ってようかな

腰を下ろした。


と……

エレベーターの扉が開いた。

車イスに乗った隆夫さんと、リハビリ担当医の女の子Sさんが降りてきた。


「おおっ、来たか!」

「うん、今着いたところ」

「そうか。ごくろうさん」

 

「洗濯物は引き取ったから」

 

「ありがとうな。あぁ、それからこれなぁーー」


そう言って隆夫さんは、

ラップに包まれた四角いご飯を差し出してきた。


「え?ご飯?」

「あぁ」


よく見ると、豆ごはんだった。


「あれ?これって、豆ごはん?」


Sさんが口を開いた。


「今日は、炊飯のリハビリをやってたんです」

「炊飯?」

「退院された後、キッチンでの作業を想定しながら」

「そんなことまでやってくださってるんですか!?」

「はい。で、今日は炊飯だったんですけどーー」

「えぇ」

「岡田さんは「豆ごはんが好きだ」っておっしゃってて」

「そうです。父の大好物です」

「だったら、豆ごはんに挑戦しようということになりまして」

「はぁ~」

「で、息子さん、13日が誕生日だったんですよね?」

「そうです」

「だから、それに合わせて「どうしても自分で作った豆ごはんを息子にプレゼントしたい!」って言われまして」

「……」

「今日、渡すのを楽しみにされていたんです(笑)」

「……」

 


父上

だから豆ごはんの塩の分量を尋ねてきたんですね


「これなぁ!」

「うん」

「美味しいかどうかわからんけどなぁ!」

「うん」

「炊いたで(笑)」


「炊いた」と言うけれど、

それは

米を研ぐところから全部やったのか?

水を入れただけなのか?

豆を入れただけなのか?

塩を入れただけなのか?

炊飯器のスイッチを押しただけなのか?

確認しなかったからわからなかった。

 

 

だけど、

この際、細かいことはどうでも良い

その気持ちだけでも嬉しいじゃないか


「ありがとう。とても美味しそうだよ」

「いや~、わからんなぁ!(笑)」

「帰ってから食べるね」

「100円な」

「……え?」

「100円」


Sさんが驚愕の表情で言った。


「お金取るんですか?」

「手間ひまかかっとりますけなぁ!(笑)」


この人なりのジョークだ。

Sさんに言っておいた。


「あ、大丈夫です。あとで100円払っておくのでご心配なく」

「美味しいかどうかはわからんけどなぁ!」


隆夫さんはそう言い残し、病室に戻っていった。


 *


帰宅して食べた豆ごはんは

お米が硬めに炊いてあって

ちゃんと豆の香りがして

塩加減もバッチリで

隆夫さん好みで、僕の好みでもあって、

お世辞抜きで上出来だった。


はてさて父上


どこからどこまでをご自分でやったのですか?

 

う~ん

 

せっかくだから訊かないでおきましょうか

 

「な~んだ」って思うのもさみしいですし

 

だけど

 

本当にいい塩梅でしたよ

 

また作ってください

 

 

 

 

では、また。