ども、本日が仕事始めの岡田達也です。
我が父・隆夫さん(88)は
現在、介護療院にて入院療養中。
年末、お見舞いに行ったときのこと。
いつも通りの確認をした。
「次、持ってきてほしい物は?」
「そうだなぁ。お父さんのタンスの中にステテコがあるだろ? あれを2枚くらい持ってきてくれんか? 夜寝るとき、今のパジャマはちょっと暑くてなぁ」
隆夫さんが入院する際、僕が新たに購入したのは、寒くないようにと考えてかなり厚手の冬用のパジャマだった。
どうやらそれが暑すぎるらしい。
「うん、わかった。持ってくるね。他には?」
「そうだなぁ、ほかに欲しい物はないかな」
「了解」
「あ!」
「なに?」
「髪の毛はまだ切らんでもええかいな?」
そう言いながら、隆夫さんは右手で自分の頭を撫でた。
「そうだねぇーー」
隆夫さんが入院して以降、僕が散髪してあげている。
伊達男の隆夫さんも、素人である僕の腕前を信じてくれているらしい。
いつも満足そうにして、散髪を終えた頭を看護師さんに自慢してくれているようだ。
とはいえ、
少し前に散髪してあげたばかり。
それに、前髪と頭頂部は長い友達がすっかりサヨナラしているので、切るほどのこともない。
「自分で触ってみて気になるようなら切ってあげるけど。どう?」
隆夫さんは頭を撫でまわし、
「うん、まだええかな」
と言った。
「そうね、そんなには伸びてないから大丈夫だと思うよ」
「いや、まぁ、年も変わるしなぁと思っただけど。まぁ、大丈夫か」
「そうね。大丈夫かと」
「そうか……」
その「そうか」に少しだけ、
ほんの少しだけ、ガッカリしたニュアンスが感じられたので、
「また気になるようならいつでも言ってよ。切ってあげるから」
そう言っておいた。
*
1月2日
僕が自分の髪の毛を切るために美容院に出かけた。
昨年の秋からくりんくりんのパーマをかけ、伸ばし放題にして「似非Jリーガー」みたいにしていたのだけど、さすがに鬱陶しくなった。
それに新年を迎えるわけだしな……
うん!
パーマも落として、スッキリ短くしよう!
そう思った。
人それぞれだろうけどーー
僕は髪の毛にハサミを入れられる感覚が大好きだ。
あの何ともいえない音もいい
コームが頭皮に当たるのも
どんどんサッパリ軽くなっていく感じも
痛んでる部分がサヨナラしていく感覚も
なんとも気持ちがいい。
僕が大金持ちだったら、2週間に一度は美容室に通うのになぁ
……
……
あっ
そっか
そういうことかもな
勝手な思い込みかもだけど、、、
もしかすると、隆夫さんも同じ様な気持ちだったのかもしれないなぁ
あのハサミを入れられてる感覚が好きだ、とか
年始を迎えるし気分転換に、とか
そんな理由で髪の毛を切ってほしかったのかもしれないよなぁ
髪の毛を切りたくなる理由は、何も“長さだけ”じゃないのかもしれない……
明日、一週間ぶりに面会に行く。
ハサミを持って行ってあげよう
そんなに切るところがなくてもいい
花形満になれないのは承知でかまわない
「カットする」という行為自体が、隆夫さんの気分を上げてくれるかもしれないし
父上
新年ですもんね
さっぱりしましょう
明日は鳥取のカリスマ美容師が伺いますのでおたのしみに
では、また。