ども、順調に正月太りしている岡田達也です。

 

 

 

 

私は涙もろい人間ではない。

 

 

……いやいや

 

……まてまて

 

だからといって

 

「やっぱりこいつは血も涙もない人間なんだな」とか

 

「そんなものとっくの昔に枯れ果てたに決まってる」なんて思うんじゃないよ

 

 

 

いいかい?

 

よく聞きなさい

 

俳優という仕事をしてる以上、台本のト書きに「泣く」と記されていれば、ちゃんと涙を流すんだよ

 

流してきたんだよ

 

そうしてきたんだよ

 

あの芝居とか、あの芝居とか、あの芝居とかで

(……さては覚えてないな?)

 

 

ついでに言わせてもらえれば、舞台上や稽古場で何度も血を流したこともある

 

しかもちょっとやそっとの量じゃないぞ?

 

ブッチャー並みの流血だぞ?

 

 

つまり、血も涙も通ってる人間なんだよ

 

だけど涙腺はゆるくないって話であって

 

 

 * *

 

 

我が父・隆夫さん(88)は

 

現在、介護療院にて入院療養中。

 

 

数日前、私宛にメールが届いた。

 

 

「今
食堂で音楽祭あり、童謡をききまたうたいおもわず、涙が出てしまいました
なみだはかれてません、父」

 

 

父上

 

メール、ありがとうございます

 

なつかしい童謡を聴いて、口ずさんで、きっと心の中の何かが揺れたんでしょう

 

涙が出たんですね

 

それはそれは良い時間を過ごされましたね

 

気持ちが伝わってくる名文です

 

 

ただ、ちょっと気になるんですが……

 

「なみだはかれてません」という一文です

 

素直な気持ちで書かれていますよね?

 

そうですよね?

 

そのはずなのに

 

「何のアピールやねん?」と受け取ってしまうのは、私の心が歪んでいるせいでしょうか?

 

 

……

 

……

 

ま、いっか

 

とりあえず「曲は何ですか?」と返信しておこう


と思っていたら、もう一通、メールが入った。

 

 

「達也に送ったメールをおもわず、看護師さんに観てもらいました 余計なことばっかりしている なみだはかれてません、父」

 

 

 * *

 

 

「私は泣いたことがない」と歌っていたのは、陽水だった。

 

「私は涙もろくない」と思っているのは、この私だ。

 

「なみだはかれてません」とアピールしてきたのは、隆夫さんだ。

 

 

涙というのは

 

流せばいいというものでも

 

ガマンすればいいというものでもなく

 

自分の気持ちに正直に、適量を流すのが良い気がする。

 

 

父上

 

泣きたいときは思いっきり泣いてください

 

スッキリすると思います

 

それから、

 

「なみだはかれてません」って書いてこなくて大丈夫です

 

 

 

 

では、また。