ども、鯖の西京焼きに目がない岡田達也です。




我が父・隆夫さん(88)

我が母・秀子さん(享年79)

二人揃って青魚が苦手だ。


秀子さんは苦手と言いつつも食べていた。

そういう人だった。

だが、隆夫さんは平安時代の公家の生まれ変わりなので、ガマンというものを知らない。

「麻呂は魚はきらいじゃ。だって魚臭いんだもん。其方(そち)が麻呂のぶんも食べたかろう。なぁ、食べたいに決まっておるよなぁ。決まっておじゃるまるでよぉ。みなまで言うな、みなまで言うな。食べるがよいぞ。ほれ、ほれ、食ってたもれ」

みたいなことを言いながら、僕のお皿に魚を寄越していた。

それほど魚、特に青魚が苦手な人で、

 

いや、苦手ではなくじゃなくて大嫌いと言っていい。


そんな隆夫さんは

現在、介護療院にて入院リハビリ中。

僕宛に送られてくるメールに、公家の苦しみが綴られている。


 *


12月25日 17:07

只今
本日2回目終わり、ベットに帰還しました、これから夕食時間まで約20分くらい部屋で待ちます。はて、さて、今夕はどんな献立かな、食卓についてからガッカリする事も度々あり、
  笑笑笑笑


 *


父上

好きなものが出るといいですね

でもね、ここが一番の問題なのですが、、、

お父上の好きな食べ物が少ないんですよ

少なすぎるんですよ


ストライクゾーンが狭すぎるんですよ

いや、ストライクゾーンなんてレベルじゃないですよね

針に糸を通すくらいの難易度なんです

そんなお口に合うお食事を用意できるのは、世界中探しても一人しかいないと思いますよ……

 

さておき

「笑」の使い方、うまいっすね

私よりよほどセンスがいいです

どこで覚えたんですか?

 


 *

 

12月25日 18:34

晩は、夕食終わってベットに帰還しました、
夕食のメイン、
あお青くきらきら✨ひかった鯖の煮込み、裏変えて、食べました、小鉢2
笑笑笑笑
お休みなさい‼


 *

父上

今晩は


それは残念ですね

さぞかし無念でしょうね

しかし……

鯖をひっくり返して皮目を見えないようにすれば食べられるんですね

知りませんでした


驚きです

すばらしい進歩です

私の皿に鯖を放り投げていた人物とは思えません

私は感動しています

家に帰ってきたら鯖出して良いですか?

 


 *


12月26日 12:25

昼飯おわり
只今部屋に帰還
本日も鯖の煮込み、涙を流しながら完食しました、
  笑笑笑笑
    父


 *


父上

けっこうな頻度で鯖が出てくるんですね

鯖爆弾ですね

こんなこと言ってはいけないのを承知の上でーー

生き地獄ですね

ご愁傷様です


 *


煮物も魚も嫌いな人間が、魚の煮物を食べているというのだから感心する。

 

ってことは、いつの日か私もきゅうりが食べられるようになるのかもしれない。

 

……

 

……

 

それはないな

 

 

人は食べなければ、生きていけないものなんですね。

 

隆夫さん、がんばって食べてください。

 

 

 

 

では、また。