ども、本日夕方のインフルエンザ予防接種がすでに憂鬱な岡田達也です。




「滑舌」(かつぜつ)

役者にとって、とても大切だ。

客席に対してよりクリアにセリフを伝えるためにも、滑舌のトレーニングは欠かせない。

滑舌が良いのは大きな武器になる。
(例えばキャラメルボックスなら、岡田さつき、筒井俊作なんかが、口跡もハッキリしてて、滑舌が良い俳優さんですね)

逆に「滑舌の悪さ」を売りにしている役者さんもいる。

あの人とか、その人とか。

(実名の記載はやめておきます)

 

それはそれで面白いとは思う。

だけど、基本的には聞き取りやすいことは重要だ。


とはいえーー

年齢を重ねると筋力が低下する
(舌根の力が弱まる)

歯並びが悪くなる
(歯茎の変化)

という肉体的な変化に加え、


「このセリフは言いにくいな……」と、一度でも思ってしまうと、泥沼に落ちていくような精神的な作用
(役者はデリケートなのです)

などなど、

いろんな要素が重なって、言えない言葉が増えていく。

ま、これは役者に限らずの話で、一般の方でも年齢を重ねれば滑舌は悪くなっていくのが普通だ。


 *


我が父・隆夫さん(88)は、

現在、介護療院に入院しリハビリの真っ最中。

昨日の午後、洗濯物の交換を兼ねて見舞いに行った。


 *


「どう、調子は?」

「リハビリ、がんばっとるで!」

「すばらしいね。今日のリハビリは何をやったの?」

「今日はこれだ」


隆夫さんはそう言って一枚の紙を見せてくれた。


「えっ?これをしゃべるの?」

「あぁ」

「ちょ、ちょ、ちょっとまって!」

「?」

「な、なんだこれ?難しすぎないか?」

「さ~いな。むずかしいで!」


これを見てほしい

 

そして、可能なら口にしてみてほしい

 




これ、役者をやってる僕にもハードルが高い言葉が並んでいるんですけど……
(僕はとくに苦手な言葉が多いのでそう思うのかもしれません)

一般人の、しかもリハビリに励む患者さんにとって、あまりにも難易度が高くないか?


「いやいや、これは難しすぎるだろ!」

「そうだろ? とくに1番と7番がなぁーー」

「言いにくい?」

「うん。ガフバフばくはつ」

「……ちょっと遠いな」

「ガフバスばくはつ」

「いやいや、この文章は、バスがガスで爆発したんだよ」

「あぁ、そうか」

「そう」

「ガスバスばくはつ」

「……おしいね。もう一回言うね。バスが、ガスで、爆発したの」

「あぁ、そうか。ガス、バス、爆発」

「……うん、まぁ、似たようなもんだから、それでもいいかも」

「それとなぁーー」

「なに?」

「7番がなぁ」

「言いにくい?」

「おああややおやひおああまり」

「……」

「おああややおやひおああまり」

「お父さんーー」

「なんだ?」

「登場人物の名前が違うかも」

「え?」

「おああ、じゃなくて、おあや、じゃないかな?」

「あぁ、そうだった、そうだった。お・あ・や!」

「そうそう!」

「ところで、お綾ってだれだ?」

「……」

「……」

「……誰だろうね?」

「知らんか?」

「知らないな」

「そうか」

「後輩に前田綾っているけど、たぶん違う人だと思う」

「誰だろうな?」

「誰だろうね?」

「知らんなぁ」

「俺も知らない」

「知らん人のことしゃべってもなぁ」

「俺もそう思う」

「言いにくいしなぁ」

「言いにくいね」

「たいへんだわ」

「たいへんだね」

「でも、がんばるで」

「がんばって。俺もがんばるわ」


 *


僕はナマケモノなので、稽古中・本番中しか滑舌練習をやらない。

だけど、隆夫さんは、今、毎日がんばっているのだ。

見習いたい。




では、また。




追伸

 

今週の土曜日です!