ども、カルチャー・クラブはドンピシャな世代だけどあまりハマらなかった岡田達也です。

 

 

 

我が父・隆夫さん(88)は

現在、入院療養中。

 

先日、私のスマホに

「クッキーかビスケットが食べたい」

というメールが入った。

 

殿様のご所望されるものは

どんな手を使ってでも用意するのが家来の役目だ。

 

しかも、だ。

その殿様が弱っている。

そんなときくらい多少のワガママを言ってくれていい。

 

しかし……

 

家にいるときは

「クッキー(ビスケット)を食べたい」

なんて一度も聞いたことがないし

 

オマケに

隆夫さんは立派な高齢者なので

喉に詰まらせるような食べ物は避けた方が賢明だろうという

 

有能な家来の勝手な判断で

 

クッキーやビスケットではなく

『シャトレーゼ』のカステラやフィナンシェ

 

それから

『ヤマザキ』のイチゴスペシャルなど

 

甘くて柔らかい

“殿様好みのお菓子”を購入し

病院に向かった。

 

その道中

隆夫さんから着信が入っていた。

気付かないまま病院に着いてしまったので

そのまま病室に入った。

 

 

「着信はなんだったの?」

 

「あぁ、差し入れしてもらおうと思ってなぁ」

 

「あ、持ってきたよ。ただし、固い物じゃないほうが良いと思って、カステラとかイチゴスペシャルにしといた」

 

「あぁ、それは食べるけどーー」

 

「?」

 

「明太子とたこ焼きが食べたくてなぁ」

 

「……え?」

 

「明太子とたこ焼き」

 

「たこ焼き?」

 

「そう」

 

「たこ焼きって、あのたこ焼き?」

 

「そう」

 

「たこ焼きなんて、普段は絶対に食べないじゃない?」

 

「いや、なんか食べたくなった」

 

「ふ~ん」

 

「なった」

 

 

この前までは

クッキーかビスケット

 

今日は

明太子とたこ焼きか……

 

 

「でもね、たこ焼きを差し入れるのってどうなんだろう?」

 

「……」

 

「病室中にソースの匂いが充満するってのも、なんだかねぇ」

 

「1個でええけなぁ」

 

「はっ?」

 

「1個でええ」

 

「……あのさ、逆にたこ焼き1個だけ差し入れるって難しいんだけど」

 

「そうか」

 

「うん」

 

「そうか」

 

「明太子は持ってきてあげるよ」

 

「たのむわ」

 

「いつものように炙っておけばいいのね?」

 

「いや、生でも食べるで!」

 

「……」

 

「生でええけなぁ」

 

 

知ってる

私はよ~く知っている

 

この殿様

生で食べなくはないが

炙ってある明太子の方が断然食い付きが良い

 

 

「じゃ今度来るときは、炙った明太子を食べやすいように切って持ってくるよ」

 

「うん、炙ってなぁ!」

 

「……」

 

「食べやすいように切ってなぁ!」

 

「……」

 

「炙ってなぁ!」

 

「じゃ、今度の水曜日に来るから」

 

「わかった」

 

 

この会話が行われたのは

22日の日曜日のこと。

 

そして、昨日のお昼

再び、殿様からメールが入った。

 

 

 

つづく