ども、稽古中に落雷のため停電という人生初の体験をした岡田達也です。

 

 

 

 

 

今、通っている稽古場はビルの6階にある。

 

稽古場としては珍しく高所にあり

 

窓も大きいので開放感があってとても眺めがいい。

 

 

ただ一つ問題があってーー

 

エレベーターが狭い。

 

普通に乗ると2人がいいとこで

 

3人乗ろうものなら

 

通勤時間帯のJR中央線状態となる。

 

 

昨日

 

ビルに到着してエレベーターを呼ぼうと思ったら

 

僕の前に若い女性が立っていて、すでにボタンを押していた。

 

 

彼女の肩には大きな紙袋が掛けられ

 

中からたくさんの衣服が覗いていた。

 

ピンときた。

 

「あぁ、衣裳スタッフさんか……」

 

 

初めてお会いする方だったけど

 

こう、なんというか、

 

只者ではない雰囲気を醸し出していたのだ。

 

僕も長いことこの業界にいるので匂い(雰囲気)でわかる。

 

わかってしまう。

 

演劇に関わる人たち独特の

 

一癖ある感じというのは消せないものだから。

 

 

すかさず笑顔で大きめに挨拶した。

 

「おはようございます!」

 

 

“スタッフさんへの挨拶を欠かすな”

 

先輩たちの大事な教えだ。

 

今でもちゃんと実践している。

 

 

と……

 

彼女は少し戸惑ったような表情を浮かべ

 

とても小さく「おはようございます」と返してきた。

 

 

うん

 

いい、いい

 

スタッフさんはキャストじゃないんだから

 

ハキハキしゃべる必要なんてない

 

 

そう思っているとエレベーターが到着した。

 

衣裳さんが先に乗り込んだ。

 

「開」のボタンを押してくれている。

 

続いて僕も乗った。

 

 

彼女に訊かれた。

 

「何階ですか?」

 

 

おやおや

 

何を言ってるんだい?

 

6階に決まってるじゃないか?

 

あ、そうか

 

衣裳さん、俺のことを知らないのか

 

スタッフさんに認知されていないようじゃまだまだだな……

 

 

「6階をお願いします」

 

衣裳さんは6階のボタンを押した。

 

 

そして

 

彼女は続けて4階のボタンを押した。

 

 

……

 

……

 

 

ええっ???

 

ええっ???

 

えええええっっっっっ?????

 

まさかの他人???

 

うそでしょ???

 

 

世の中で見かける

 

肩にデカいかばんや紙袋をかけている人の9割は

 

衣裳スタッフさんって決まってるのに!!!

 

ちがうの?

 

ちがったの???

 

元気に挨拶しちゃったよっ!!!

 

田舎では見ず知らずの方同士で挨拶することはよくあるけど!

 

都会で知らない人に話しかけられたら引かれるんじゃないの???

 

ど、ど、どうしよう?????

 

 

エレベーターの中

 

恐ろしく微妙な空気が流れ

 

4階に到着と同時に

 

彼女はそそくさと降りて行った。

 

 

長いことこの世界にいるけど

 

僕の嗅覚なんてまったく信用できないことを思い知らされた昨日の出来ごと。

 

 

 

 

 

では、また。