ども、将棋盤を磨く岡田達也です。
我が父・隆夫さん(88)には
2人のメル友がいる。
一人は
行きつけのパチンコ屋の食堂で働く木村さん(女性 仮名)
もう一人は
キャラメルボックスのOB・今井義博氏(男性 本名)。
木村さんと、今井くんの共通項は
「隆夫さんに優しい」という点。
日本で、たった二人の、隆夫さんの味方。
だから
殿様気質の隆夫さんは
二人の話をするときだけ顔が自然とほころび
二人の話をするときだけ声のトーンが変わる。
愛想が悪い息子の代わりとなっての活躍に感謝している。
*
今井くんが初めて鳥取に来てくれたのは
まだブルートレインが走っていたときだったから
今から25年以上前の話になる。
僕より先輩だけど
僕よりも年下の彼とは
どういうわけかウマが合った。
僕が芝居で苦しんだり、ダメだったり、落ち込んだりしたときは
いつでも悩みを訊いてくれたものだ。
その代わり
お金のなかった今井くんに
月に一回、焼き肉をごちそうしていた。
そう考えると
ウィンウィンの関係だったのかもしれないし、
ひょっとすると
「インタビュー詐欺」の異名を持つ彼の技に
僕が転がされていただけかもしれないけど。
なんで鳥取に遊びに来てくれることになったのだろう?
理由は忘れたが
唯一、覚えているのは
西川浩幸先輩も一緒に遊びに来る予定だった、ということ。
だが、西川先輩は何かの理由があって直前でドタキャンとなった。
結局、今井くんだけがやってきた。
そのとき
母・秀子さんが、えらく今井くんを気に入った。
「今井さんは、なんでもよく食べるのね。あははははは(笑)」
と、まずはその食いっぷりを気に入り
鳥取で購入したサッカーボール柄のどでかいクッションを持って帰ろうとする姿に
「あんな大きなものを買って持って帰ろうなんて。今井さんはすごいわね~(笑)」
と、何を褒めたいのかよくわからないがケラケラと笑っていた。
ひょっとすると
秀子さんもインタビュー詐欺に引っ掛かっていただけの可能性も高い。
隆夫さんも今井くんに夢中になった。
夕食後は、僕をそっちのけで、2人で将棋を指していた。
これが、まぁ、楽しそうで、楽しそうで。
「あぁ、連れてきて良かったなぁ」と心から思ったものだ。
そして、その後は
事あるごとに
「今井くんは」
「今井くんは」
「今井くんは」
を連呼するので
「あぁ、連れてくるんじゃなかったなぁ」と心から後悔したものだ。
*
それから何回遊びに来てくれただろう?
正確な数は覚えてないけど
最後に来てくれたのは
僕が『刀剣乱舞』出演が発表された直後だった。
このときも
「刀剣乱舞というゲームをやったことがない」とか
「2,5次元みたいなスケールのデカい舞台に俺は向かない」とか
「50過ぎのおっさんが若者の中に入ることは法律で禁じられているはずだ」とか
「もう俺の龍馬役なんてみんな食傷気味のはずだ」とか
「つ~か、刀剣乱舞のお客さんは誰も俺のこと知らないだろうから、「誰、あのおっさん?」みたいになるに決まってる」など
とにかくネガティブな発言しかしない僕を
「大丈夫ですって!」
と、鳥取の我が家で酒を飲みながら励ましてくれた。
(あれが無かったら舞台に立ててなかったかも)
その直後、コロナが始まった。
不要不急の用事では県をまたぐことは不可能になった。
今井くんも遊びに来られなくなった。
ようやく、ようやくと言っていいだろう。
とにかく
隆夫さんが死ぬ前にもう一度、今井くんに会わせたいと思っていたので
「タイミングが合えば遊びに来て!」とお願いしていた。
そして今日、
4年ぶりに鳥取に来る。
*
楽しい時間になることは間違いないけど
唯一の不安要素は
気を良くした隆夫さんの寿命が
また少し延びてしまうかもしれない
……ということ。
さて、迎えに行ってきます。
では、また。
追伸
明日です!