ども、昨日の一番は「大葉漬け真いか」だった岡田達也です。
昨日の朝
私の父・隆夫さん(88)との会話。
隆夫さんが上機嫌で言った。
「今日は『はま寿司』だなぁ!」
昨日は「父の日」ということで
少しだけ父を甘やかそうと
『はま寿司』のテイクアウトを予約しておいた。
「うん、持ち帰りだけどね」
「『はま寿司』は『スシロー』よりも安いんか?」
「ほとんど同じかな」
「じゃ『くら寿司』は?」
「それも同じくらい」
「じゃ『かっぱ寿司』は?」
「同じくらい」
「そうか」
……もしもし
一体、何が訊きたいんですか?
四大回転ずしチェーン店の価格競争についてですか?
各企業の営業努力の話ですか???
それは担当の方に訊いてください
「ひょっとして『はま寿司』はイヤだった?」
「そんなことないわよ~!」
「……」
「ええで、『はま寿司』!」
「よかった」
「じゃ、今日はワインを買ってきてやろうか?」
「ありがとう。でも、気持ちだけで十分だよ」
「ま、そうだなぁ。お父さんはどんなワインを買ったらいいか、わからんしなぁ。でもリクエストしてくれたら探してみるで!」
……『ドンペリ』お願いしたら探してくれますか?
「うん。買いたくなったら自分で買うから。だから大丈夫」
「ところで、ワインは好きか?」
「好きだよ」
「そうか?」
「……しょっちゅう飲んでるよね?」
「そうか?」
「うん。 お父さんの目の前で」
「そうか?」
「スパークリングワインなんて週1で飲んでるよね?」
「そうか?」
自分の食事には興味津々でも
息子が何を食べて何を飲んでいるかなんて眼中にないのですね……
「それに、以前にも何度かお願いして買ってきてもらってるよ?」
「そうか?」
「忘れちゃったかもだけど、それくらい飲んでるよ」
「赤ワインとか白ワインは飲まんのか?」
「……いや、両方飲んでるよ。目の前で」
「そうか?」
「飲んでみる?」
「いや、ええ」
「……」
「……」
「そうね、お父さんは好きじゃないと思うからやめておいたほうがいいかもね」
「葡萄酒は飲まんのか?」
「……あのね、世間では、葡萄酒のことをワインって言うんだよ」
「そうか?」
「うん」
「へ~、葡萄酒がワインなぁ」
「そう」
「スパークリングワインってなんだ?」
「簡単に言うと炭酸入りのワイン」
「炭酸か?」
「そう」
「それはまた味が違うんか?」
「味っていうか、俺は炭酸が好きだから、味というより喉越しが気に入ってる」
「ところでスパークってなんだ?」
「この場合は「発砲」だから「泡」って意味になるかな」
「あわ?」
「そう、泡」
「ワインに泡が必要なんか?」
「……必要か不必要かと訊かれたら、返事に困るけど。好きな人は好きなんだよ」
「なんで泡を入れるだ?」
「……だ・か・らっ! 昔から炭酸が好きな人がいたんだろうね!」
「ほう」
「その人がワインに炭酸を入れたら美味しいんじゃないか?って考えたんだね」
「お父さんは泡はビールだけでええ」
……フランス人に殺されるぞ
「おいしいんだよ、スパークリングワイン」
「ふ~ん。で、泡は赤か白か?」
「両方ある」
「なら、1000円あげるけ、買ってきんさい」
「ありがとうございます」
みたいな会話が繰り広げられた。
*
隆夫さんは
回転ずしチェーンの値段の格差を知らないし
ワインのことも知らない。
でも、それは当然。
「知ってて当然」なんていうのは僕のエゴでしかない。
おそらく
今、僕が30歳にも満たない人と話したら
「このおじさん、こんなに世間のことを知らなくて、よく生きてるなぁ」
と、驚かれると思う。
それくらい知らないことだらけだ。
父の日の会話が
あと何年できるのかわからないけど
これはこれで「イラっ」とし
そして「楽しく」話せるのだから
大切にしなければいけないな、と思う。
それとーー
隆夫さんには僕(息子)がいるが
僕には僕がいない。
だから
僕は生涯「父の日」に祝ってもらうことはない。
そんなこともあるから
隆夫さんが生きているうちは
ささやかなお祝いを続けていこうと思う。
では、また。
追伸
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