ども、カレーは辛口にかぎる岡田達也です。

 

 

 

 

 

昨日の続きというか、オマケの話。

 

 

一昨日の同窓会に出席してくださった

 

高校時代の恩師・竹本先生(77)

 

通称「親分」

 

 

 

駒澤大学野球部出身で

 

バリバリの体育会系。

 

超・体育会系。

 

血圧高目系・体育会系。

 

極悪系・体育会系。

 

極道系・体育会系。


 

僕の勝手な想像だけど、、、

 

先生の好きな映画は『仁義なき戦い』

 

先生の好きな俳優は『高倉健』と『菅原文太』

 

先生の好きな曲は鳥羽一郎の『兄弟船』のはず。

 

(確認していませんが)

 

 

そんな竹本親分は飲みの席でも豪快で

 

8人の教え子は50代半ばになった今でも赤子扱いだった。

 

とくに野球部出身のメンバー(3人参加)はそりゃもう大変。

 

先生は、野球部の監督ではなく

 

マネージャーを務めていたのだけど

 

「マネージャー」なんて可愛らしい響きからは程遠い

 

実際は「鬼軍曹」でしかなかった。

 

なので野球部のやつらは

 

「……あのマネージャー、いつか殺してやる」

 

と胸の内で思っていたとしても不思議ではない。

 

 

そんな関係性は今もなお変わることなく

 

野球部の坊主頭を撫でまわしながら

 

(悲しいかな、坊主は坊主でもバリカンで刈ったのではなく、ただの禿げ頭ですが)

 

「おまえらがおせ(大人)になれたのは誰のおかげだいや? ワシのおかげだろうがっ!」

 

「ハイっ!」

 

「それなのに、誰一人としてお中元も、お歳暮も送ってこんがな!」

 

「……」

 

「どういうことだいや!?」

 

「すみません!」

 

「なっとらん!」

 

「すみません!」

 

みたいなことの繰り返し。

 

そりゃ見てるこちらは笑うしかない。

 

 

そんなこんなで

 

楽しい時間はあっという間に過ぎていき

 

時計は20時30分を指していた。

 

 

始まる前

 

幹事の中村と僕は耳打ちしながら相談していた。

 

「先生を20時40分の汽車に乗せるために、20時30分で一度締めよう」と。

 

 

「先生、そろそろ時間がーー」

 

「なにを言うとるだいや? もう終わりかいや? わしはまだ飲むで!」

 

「いやいや、奥様が心配されるかもしれませんし、また次回ってことで」

 

「ワシに命令すっだかいや?」

 

「いやいや、とんでもないです!」

 

「終わり時間くらいワシが決めるわい!」

 

「でも、もう飲み放題の時間も終わってますしーー」

 

 

そこで先生の電話が鳴った。

 

先生は表示された名前を見て、一瞬、表情が曇った

 

ーーように見えた。

 

 

「あぁ、もしもし」

 

先生は

 

我々に話しかける声とはまったくちがう

 

聞いたことないほど柔らかい声色で電話に出た。

 

 

僕たちに相手の声は聞こえない

 

「あぁ、今か? 今、店を出るところだがな」

 

これは奥様に間違いないな……

 

「いや、20時30分に帰ろうと思っとたけど、こいつらが引き留めるけなぁ」

 

誰も引き留めてないですよ、先生

 

逆に送り出そうとしてるんですけど

 

「わかった、わかった、すまん、すまん」

 

僕らに対する物言いと、ずいぶん違いますね?

 

「今どこにおっだいや? 駅の北口か? わかった、すぐに行くけ。すぐだ、すぐ」

 

先生は電話を切った。

 

 

そして振り返り

 

青い顔して言った。

 

「かーちゃんが、怒っとる……」

 

「ほら! 言わんこっちゃない!」

 

「マズいで、あれは本気だったな」

 

「迎えに来てもらってるんですか?」

 

「あぁ」

 

「もう、先に言ってくださいよ!」

 

「すまん、すまん」

 

「先生、じゃ、こうしましょう」

 

「なんだ?」

 

「僕たち全員で車までお送りします」

 

「おう」

 

「僕たちがそばにいれば、奥様も怒れないでしょうし」

 

「う、うん」

 

「ただしーー」

 

「なんだ?」

 

「車が出発してからはどうなっても知りませんからね」

 

「お、おう」

 

「どんな修羅場になっても僕たちは助けることはできません」

 

「……誰か一人くらい乗っていくか?」

 

「行きません」

 

「そ、そうか」

 

 

こうして8人の子分全員で、親分を駅まで送った。

 

 

極道の妻たち……

 

じゃなかった、

 

先生の奥様はニコニコと頭を下げ

 

「すみません、みなさんで送ってくださって」

 

と声をかけてくださった。

 

「気をつけてお帰り下さい!」

 

と応え、僕らは先生を助手席に押し込んでドアを閉めた。

 

 

気のせいだろうか?

 

発進した車がいくぶん急加速に見えたのは?

 

 

 *

 

 

「自分は誰が相手でも変わらない」

 

と、豪語できるような強さも大事だろうけど

 

相手によって態度が変わる弱さも人間らしくていい。

 

 

先生、いっぱい怒られたんだろうなぁ

 

今度、訊いてみようっと。

 

 

 

 

 

では、また。

 

 

 

追伸

 

次回の『東京砂漠』は

 

6月24日(土) 11時~
 

渡邊安理ちゃんと

 

小多田直樹くんと

 

今井義博氏が参加予定です!