ども、ボヤきたい岡田達也です。
「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」
という言葉がある。
僕がこの言葉を知ったのは
プロ野球の名将・野村克也監督が
囲み取材で発言していたからで
てっきりノムさんの言葉だとばかり思っていたが
その原典は
18世紀に現在の長崎県の平戸藩主であった松浦静山(1760~1841)の言葉だったと後で知った。
ノムさんはその言葉を座右の銘として、たびたび引用していたらしい。
さておき
昨日の夕方
出勤(パチンコ)から帰宅した
父・隆夫さん(88)が、何やら身の回りを探り始めた。
……もう、イヤな予感しかない
きっと何かが見つからないのだろう。
落としたのか、失くしたのか。
だが、あえて黙っていた。
と、隆夫さんが口を開いた。
「お父さん、アホウだけなぁーー」
あぁ
きた、きた、きた、きた
さむい、さむい、さむい、さむい
ブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブル
悪寒が背中を走った。
自分のことを1ミリもアホだと思っていない
おそろしくプライドの高い人間が
突然へりくだるのは、それなりの理由がある。
経験上、僕はそれを熟知している。
「なに?」
「財布が無いだが」
「……」
「さっきコンビニで買い物したときに、レジに置きっぱなしにしたみたいだ」
「……」
「セブンイレブンに電話してくれんか?」
よかった。
心当たりが無いのが最も困るが
買い物して返ってきたんだから
そこで間違いないだろう。
電話してみた。
優しい店員さんが
「茶色の長財布ですね。お預かりしていますよ」
と答えてくれた。
「あったか!」
「うん」
「そうか、そうか!」
「……」
「なんで忘れたんかな?」
「……いや、だから、買い物したときにお金を払って、商品を受け取るときに、財布をカバンに入れないでカウンターに置いたんだよ」
「あぁ、そう言えば置いたな!」
「そうでしょ?」
「あぁ!」
「お年寄りは多いみたいだよ、置きっぱなしにしてしまって、しまうのを忘れる人が」
「そうか!」
「うん」
「なんでだろうな~?」
「ま、それが歳を取るってことだな」
「そうなんかぁ?」
「だから、とにかくお金を払ったらカバンにしまう癖をつけなきゃ」
「いや~」
「?」
「不思議なことがあるもんだなぁ~」
*
ここだけの話だが……
一昨日の仁風閣での講座
現場に到着して車を降りようとしたとき
背中が冷えた。
進行台本が無いことに気付いたから。
僕は
忘れないようにわざわざ玄関に置いておいたのを忘れて家を出たのだ。
……
……
55歳でこの体たらく。
隆夫さんのことなど、これっぽっちも責められない。
*
僕は、思う。
「落とし物に不思議な落とし物あり、忘れ物に不思議な忘れ物はなし」
と。
この説、まちがっていますか?
では、また。