ども、Mリーグに新規参戦するチームが発表されてワクワクが止まらない岡田達也です。

 

 

 

 

 

昨日のつづき。

 

 

 *

 

 

台本というのは

 

配られた瞬間から役者がセリフを覚え始める

 

……というものではない。

 

 

もちろん完全な脱稿状態でなら

 

「覚え始めてください」

 

という号令がかかり

 

役者は泣きながらセリフを入れ始めるのだけど

 

 

多くの場合

 

(特に劇団公演の場合)

 

台本が配布されてからも

 

「推敲(すいこう)」という作業が入る。

 

平たく言えば「練り直し」

 

あるいは「ブラッシュアップ」。

 

 

台本が配られて

 

それを片手に役者が立ち稽古して

 

それを見た脚本家が

 

「ん~、ここはもっとこうした方がいいかもな」

 

「これじゃ話が繋がってないな」

 

「このセリフ、役者が言いにくそうだな」

 

「順序を入れ替えた方が面白いかも」

 

などの検証をして、推敲が行われる。

 

 

その回数が多ければ

 

第1稿、第2稿、第3稿、第4稿と、

 

果てしなく改訂作業が続き

 

 

最悪の場合

 

セリフ覚えに自信の無い役者が

 

「あの~、そろそろセリフ覚え始めていいですか?」

 

と、脚本家に尋ね

 

「ん~、もう少し直したいんだよね。覚えるのはもうちょっと待って」

 

と言われて泣きながら帰宅する

 

ーーみたいなことは日本全国の劇団でよく見られる光景だ。

 

(こんなこと書いてたら、日本劇作家協会から消されるかもな……)

 

 

 *

 

 

『クローズ・ユア・アイズ』

 

成井さんがどれくらい苦しんで書いていたのかは知る由もない。

 

とにかく

 

3日に一度くらいの割合で1シーンずつ台本が配られ

 

それを元に立ち稽古をしていた。

 

 

何度も何度も

 

「1稿は覚えないで」

 

という念押しがなされていたのは

 

裏を返せば

 

大きな変更が加わる可能性がある、ということだ。

 

 

そして

 

成井さんがその稽古を見て改訂し

 

数日後に第2稿が配られる、という流れだった。

 

 

推敲は大切だ。

 

が、稽古時間は限られている。

 

そのせめぎ合い。

 

そのうち成井さんから

 

「第2稿は覚えていいよ」

 

と言ってもらえて、必死で覚え始めていたときだった。

 

 

成井さんがパタッと稽古場に顔を出さなくなった。

 

僕のあてにならない記憶では

 

3日、

 

5日、

 

いや、一週間以上だったと思う。

 

僕が入団して経験したことのない日数が経過していた。

 

 

そしてーー

 

成井さんが稽古場に現れた。

 

両手に紙袋を持って。

 

その紙袋には台本がぎっしり詰まっていた。

 

 

当時

 

キャラメルボックスの台本の作り方は

 

成井さんが打ち出した脚本をB4サイズでコピーして

 

それを役者たちが稽古場に並んで二つ折りにし

 

(演劇界では珍しいB5サイズです)

 

みんなで流れ作業をして組み上げていく、というのが常だった。


 

『クローズ・ユア・アイズ』は全部で14シーンある。

 

これも不確かな記憶だけど

 

成井さんが稽古場に来なくなったのは8シーンまで稽古していたときだった。

 

 

「これ、折って」

 

みんなが稽古場に並んで

 

出来立ての、B4の脚本を二つ折りにし、それを順序良く並べ、

 

流れ作業で組み上げていった。

 

僕は最後のほうのページを組んでいたんだけど

 

なんと

 

「完」

 

という文字が見えた。

 

 

……えっ?

 

……うそ??

 

……脱稿したの???

 

 

成井さんがこんなに長い期間、稽古場に来なかったこと

 

一度に渡された台本が9~14と全部で6シーンもあったこと

 

(分量で言えば台本の3分の1。つまり約40分ですね)

 

 

全てが初めての経験だった。

 

 

 

つづく

 

 

 

追伸

 

「おい、おい、おまえさん。今日の日記、たしかに文字数は稼いでいるけど、昨日から話がちっとも進んでないじゃないか?」

 

と思われた方、正しいです。

 

ですが、ここを書いておかないと、僕の言いたいことに繋がらないのです。

 

あせらず明日をお待ちください。

 

 

 *

 

 

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