ども、セガサミーフェニックス近藤誠一選手のMリーグ勇退の報に涙した岡田達也です。

 

 

 

 

 

昨日のつづき。

 

 

なお

 

本日はのっけからネタバレするので

 

「話のあらすじは冬まで知りたくね~んだよっ!」という方は

 

今日はお休みください。

 

 

 *

 

 

『クローズ・ユア・アイズ』のあらすじ

 

大正12年12月22日早朝。

マルセイユ発・横浜行きの旅客船の中で、新進画家の香取武三が息を引き取った。

武三は1年前からパリに留学していたが、関東大震災の報せを受け、不眠不休で帰りの旅費を稼いで帰国の途についた。

震災で行方不明になった恋人・幸代を探すために。

無理が祟って肺炎をこじらせ、日本到着を目の前にして死んでしまった武三。

が、心臓が停止した直後、彼は目を開ける・・・。

二度と開かないはずの目を。

彼を迎えに来た天使・プロキオンは武三に死を宣告したが、武三は信じない。

日本に着き、従兄の医師・正岡寛治に診てもらうと、やはり武三の心臓は止まっていた。

そこへ再びプロキオンが現れ、武三を連れて行こうとするが、武三はそれを聞き入れない。

体が朽ちていく中、武三の幸代探しが始まった。

 

 

 *

 

 

僕が演じていたのは香取武三。

 

「……おまえ、絵心が無いくせに、よくぞ画家の役なんてできたな」

 

なんて思ってはいけない。

 

俳優とは“何者にでもなれる力”が必要であって

 

もっと言うなら

 

それができなければこの仕事は務まらない。

 

このとき、僕は少なくとも画家だった。

 

(画力はさておき、気持ちだけはな)

 

 

さて、ここからが大事な話。

 

 

従兄の医師・正岡寛治を演じていたのは

 

自転車キンクリーツカンパニーの久松信美さん。

 

キャラメルボックスに何度も出演してくれている、我らが「アニキ」。

 

そして、

 

寛治の妻・由紀子を演じていたのは坂口理恵先輩。

 

 

あくまでも僕の私見だけど

 

このときの久松さんは「太陽」で

 

坂口さんは「月」だった。

 

直情型で瞬間湯沸かし器のような寛治さん

 

そんな旦那様を一歩も二歩も引きながら上手にリードしていた由紀子さん。

 

 

久松さん、坂口さんのお2人は

 

僕よりも年上で、演劇のキャリアもはるかに長い。

 

センスも、技術も、しっかり持ち合わせた先輩たちが

 

物語を通して、ずっと僕の(武三の)側にいてくれた。

 

 

寛治さん、由紀子さん夫婦は

 

武三の死を受け入れ

 

その上で彼の行動を支えつつ

 

ときに勝手な振る舞いをする武三を本気で叱ってくれるーー

 

そんな存在だった。

 

 

世の中に“上手い俳優”はたくさんいる。

 

もちろん久松さんも、坂口さんも上手い俳優なんだけど

 

このときの2人は

 

僕にとって

 

「上手い」ことよりも

 

「本気でしゃべる俳優」であってくれた。

 

 

これが、

 

これが、

 

どれほど僕の心を動かしてくれて、

 

そして支えになってくれたことか。

 

 

僕自身は稽古をしていても

 

物語の全体像が見えないせいにして

 

ずっとフワフワしていたのに

 

(ま、それは脚本が全部あったとしても同じだな)

 

 

この2人は僕と違って

 

脚本に対する腹の据わり方がハンパなく

 

いつだって全力投球していた。

 

「なんでこの人たちはこんなに本気で喋れるんだろう?」

 

と、感服するしかなかった。

 

 

で、

 

2人共が凄いのは

 

ちょっと技術を身に付けた俳優にありがちな

 

「おまえ、もっとああしろ」「こうやってみろ」

 

といった安いアドバイスなど一切くれることはなく

 

こちらの拙い力を引き出すため

 

相手役に向かってひたすら愚直に演じる、という手段を選ぶこと。

 

己の手柄など二の次にして。

 

 

こうやって言葉にしてしまうとあまりにも陳腐だけど

 

若い俳優さんは

 

今書いた言葉をどうか覚えておいて欲しい。

 

 

先輩からのアドバイスはすべてが貴重だとは限らない。

 

もちろん大切な意見だと思ったなら受け取ればいい。

 

だけど

 

仲間や後輩にいつもペラペラと演技指導しているような俳優の意見など

 

これっぽっちの価値もない。

 

キツイ書き方だけどこれは事実だ。

 

 

話を戻そう。

 

 

そんな真正面からぶつかっても

 

がっつり受け止めてくれる二人に支えてもらいながら稽古していた。

 

そんなある日

 

数日振りに、成井さんが稽古場にやってきた。

 

両手に、紙袋を持って。

 

その紙袋の中身は、大量の台本だということはすぐに分かった。

 

 

あれ、かなりのシーン数があるな……

 

 

 

 

 

つづく

 

 

 

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