ども、豚バラ肉を炒めているときの香りが大好きな岡田達也です。

 

 

 

 

 

昨日のつづき。

 

 

 *

 

 

脚本を書いている成井さんに尋ねた。

 

「この話、最後どうなるんですか?」

 

「ん~、わかんないね」

 

「えっ?」

 

「わからない」

 

 

……わからない?

 

書いてる本人が??

 

そんなことあるんだろうか???

 

ひょっとして、成井さん、勿体ぶってるのかな???

 

 

今ならわかる

 

いや、

 

この言い方はおこがましいな

 

わかるような気がする、というのが正しいかも。

 

成井さんは本気で「わからない」と言っていたんだと思う。

 

 

本来、台本というのは稽古開始の時点ですべて揃っているのが理想だ。

 

だけど、

 

たくさんの脚本家さんと仕事をさせてもらったので、身を持って知った。

 

脱稿しないで稽古に入る作家さんは、みなさんの想像以上に多い。

 

多いどころの話ではない。

 

もちろん、それは、わざとじゃない。

 

より良いものを書こうとするから時間がかかるのだ。

 

 

とくに劇団の公演なんて「本が無くて当たり前」みたいなところも多い。

 

(演劇人生を続けたいので劇団名は書きません)

 

唯一、有名な話なので書けるのは

 

かの、井上ひさし先生なんか

 

脚本が上がらないで何度も何度も初日を飛ばし

 

それが売りになっているくらい遅筆なことで知られている。

 

 

僕が実際に体験したのは

 

稽古初日に4ページだけ

 

もっと少ない1パージだけ

 

セリフ1個すらなくてシノプシスだけ

 

シノプシスもなくて登場人物の名前だけ

 

……なんて現場もあった。

 

(すべて実話です)

 

 

それを思えば

 

何シーンかあったのだから

 

ガタガタ言わずに稽古していれば良かったのだ。

 

 

だけど

 

僕は勝手に切羽詰まっていた。

 

“これ、どうなるの?”

 

“この話はどこへいくの?”

 

“自分はどうすればいいの?”

 

 

だから

 

「わからない」と答えた成井さんに食い下がった。

 

「なんとなくでもいいんですけど……」

 

成井さんは困った顔で言った。

 

「う~ん」

 

「方向性というかーー」

 

「わかんないよ!」

 

怒られた。

 

 

 *

 

 

ざっくりした記憶だけど

 

稽古初日は4シーンくらいあったと思う。

 

読み合わせをし、稽古が始まり、立ち稽古が進んだ。

 

成井さんは、演出と執筆とを平行に進めていった。

 

2~3日に1シーンずつが配られた。

 

少しずつ、少しずつ、物語が紡がれていった。

 

 

台本が3分の2くらいまで上がったところで、、、

 

成井さんが執筆に専念するということで稽古場に来なくなった。

 

ピタッと。

 

それはとても珍しいことだった。

 

おそらく僕にとっては初めての経験だったと思う。

 

それまでの成井さんは

 

立ち稽古を見ながら話を書き進めることが多かったから

 

どんなに短い時間でも必ず稽古場に顔を出していた。

 

その成井さんが姿を見せない……。

 

 

成井さんが稽古場に来なくなって何日が経過しただろう?

 

その間は

 

演出助手のリードで

 

手元にあるシーンを繰り返し稽古していた。

 

 

つまり

 

頭から70~80分ぶんくらいを。

 

 

 

 

 

つづく

 

 

 

追伸

 

ついつい書き始めてしまった話ですが

 

作品を観てない方にはよくわからない内容かもしれません。

 

が、もう数日お付き合いくださいませ。

 

 

それから

 

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