ども、目を閉じると「あぁ、今日も腰が痛いな」と思うばかりの岡田達也です。

 

 

 

 

 

2023年、キャラメルボックスのクリスマス公演

 

演目が発表になった。

 

『クローズ・ユア・アイズ』

 

23年ぶりの再演となる。

 

 

 

実は……

 

個人的に思い入れも強く

 

そして何より

 

とても良い作品だと思うので

 

何度も再演を訴えてきた。

 

 

だけど

 

タイミングが合わなかったり

 

劇団の事情だったりで

 

ずっと先送りにされてきた。

 

 

「もう再演されないのかな?」

 

と、あきらめかけていたところなので

 

上演が発表になったときはとても嬉しかった。

 

 

僕は出演しないけどちっとも残念じゃない。

 

今、この時代に

 

この作品を客席から観られることを

 

とても楽しみにしている。

 

 

たぶん、その期待値は

 

初演を観てくださって

 

「クローズユアアイズ好きなんだ」

 

というお客さんに負けない自信がある。

 

(……そこは競わなくていいんじゃないのか?)

 

 

ひょっとすると

 

日本で一番期待値が高い人間かもしれない。

 

 

それくらいは言わせてほしい。

 

言っていいじゃないか。

 

だって

 

あのとき

 

僕はこの作品と心中したんだから。

 

(……言葉のチョイスな)

 

 

そんな

 

初演に出演していた僕の思い出話を少しだけ。

 

 

 * * 

 

 

亡くなった母・秀子さんは読書家だった。

 

ジャンルを問わず、活字を追いかけるのが好きな人だった。

 

 

残念ながら僕は秀子さんほどの読書家にはならなかったので

 

読書量は彼女の足元にも及ばなかったけど

 

生意気にも面白いと思ったものは勧めていたし

 

母も面白い本を勧めてくれていた。

 

 

ただし、

 

その読み方はまったく違った。

 

 

秀子さんは

 

まず最初にラストを読んで結末を知り

 

それから冒頭に戻って読み始める人だった。

 

例えそれがミステリーでも謎解きでも。

 

 

僕には理解不能である。

 

 

何度も尋ねた。

 

「え? そんな読み方して楽しいの?」

 

 

秀子さんは決まってこう言った。

 

「面白いよ」と。

 

 

「でもさ、」

 

「?」

 

「それじゃドキドキとかワクワクとかできないでしょ?」

 

「それを求めてるわけでもないから」

 

「え?」

 

「結末を知ってると安心して読み進めることができるのよ」

 

「へ~」

 

「それからね」

 

「?」

 

「結末を知ってから冒頭を読むと、「ええぇ! この物語、どうやってつながっていくんだろう?」って、ちがう楽しみ方もあるのよ」

 

「ふ~ん」

 

 

 * *

 

 

2000年

 

正確には覚えていないけど

 

『クローズ・ユア・アイズ』の稽古は10月からやっていたと思う。

 

 

成井さんの完全オリジナルの新作。

 

当然、ストーリーは聞かされていた……

 

けれど、

 

それはメディアやお客さんに向けて発表されているものと同じレベルでしかなく

 

出演者と言えどもこの話がどう転がっていくのか?は知らされていなかった。

 

 

2000年と言えば

 

僕が芝居を初めて8年が経った頃だった。

 

たぶん、少しずつ、少しずつだけど

 

自分の中で“お芝居の作り方”みたいなものが

 

出来上がってきてた時期だったと記憶している。

 

 

「なぜ、このセリフを発するのか?」は

 

“そこに書かれているから”という理由以外に大きな要因がある。

 

それは脚本上

 

そのセリフの前後に書かれている

 

自分が演じる人物の行動だったり発言だったりを読み解くことによって

 

初めて確かなものとなるのかも……

 

なんてことを考え始めていた時期だった。

 

 

『クローズ・ユア・アイズ』

 

稽古初日に台本がすべて揃っていたわけではなく

 

前半の数シーンしかなかった。

 

 

僕は出番もセリフも多かった。

 

だから焦っていた。

 

フワフワしゃべってないで、早く確かなものが欲しかった。

 

 

そんな焦りもあって、脚本の成井さんに尋ねた。

 

「この話、最後どうなるんですか?」

 

 

 

 

 

つづく

 

 

 

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