ども、麻婆豆腐の塩味に初挑戦した岡田達也です。

 

 

 

 

 

昨日の朝

 

父・隆夫さん(87)が言った。

 

「今日は天気がええけなぁ、ファミマまで歩いて行ってみるかなぁ」

 

 

そのファミマは我が家から一番近いコンビニで

 

グーグルマップでは徒歩5分と表示される。

 

ちなみに

 

僕はせっかちなので3分で歩いてしまうが。

 

 

「あぁ、いいじゃない。散歩がてらに。行っておいでよ」

 

「だけどなぁ、往復で40分以上かかるけなぁ。40分以上なぁ」

 

「……」

 

 

歪んだ笑顔を浮かべながら、

 

言葉の方はとても嫌そうなニュアンスで、

 

まるで三途の川を渡りに行くかのように聞こえる。

 

とにかく歩きたくないのだろう。

 

 

「ゆっくり、ゆ~っくりしか歩けんけなぁ」

 

「……」

 

「やすみ、やすみなぁ」

 

「……」

 

「往復で40分以上だけなぁ」

 

 

コンビニまでの往復がいかに大変なことなのか?

 

徒歩で100m以上歩くことがどれだけ辛いか?

 

アピールがものすごい。

 

 

ここで

 

「そうだねぇ、大変だねぇ。40分だもんねぇ。道中気をつけてね。何かあったら連絡してね。いつでも車で迎えに行くから。しっかり水分補給しながら歩くんだよ。無理だと思ったら途中で引き返せばいいから。なにもゴールすることがすべてじゃないからね。ダメだったら、また次回頑張ればいいじゃない!」

 

というような、優しい言葉をかけてあげればいいのだろうけど

 

僕は、神様でも、お釈迦様でも、ローマ法王でもない

 

並の神経しか持たない人間だ。

 

 

僕なりの、精一杯の気遣いを発揮して言った。

 

「40分と言わず、1時間くらいかけて歩けばいいじゃない? 急ぐ必要は無いよ」

 

 

これが嫌味に聞こえたのだろう。

 

隆夫さんは不機嫌そうに「はっ」と鼻で笑って会話は終わった。

 

 

僕は先に仕事に出かけた。

 

 

 *

 

 

仕事から帰宅してみるとーー

 

 

おや?

 

おやおや??
 

キッチンのシンクが磨いてあるぞ……

 

 

三角コーナーも

 

スポンジ入れも

 

ちゃんと洗って食器乾燥機に入れてある

 

 

これは一体どういうことだ?

 

可能性としては

 

1 おせっかいな泥棒が我が家に入って、シンクを磨いただけで何も盗まずに出て行った

 

2 隣の斎藤さんが我が家に入って、シンクを磨いてくれた

 

3 隆夫さんが磨いた

 

この3つしかない。

 

 

……

 

……

 

 

「お父さん」

 

「なんだ?」

 

「もしかして、シンクを磨いてくれた?」

 

「あぁ、磨いたで!」

 

「!!!!!!」

 

 

こ、これは!

 

一大事じゃないかっ!!

 

 

“季節外れの雪が降る”

 

あるいは

 

“黄砂が舞うのではなく一万円札が舞い散る”

 

あるいは

 

“鳥取が日本の首都になる”

 

それくらいのインパクトがある。

 

 

「コンビニまで歩いたらなぁ!」

 

「……」

 

「元気が出てなぁ!」

 

「……」

 

「磨いておいたで!」

 

「……」

 

「たまにはなぁ!」

 

「……」

 

「やらないけん!」

 

 

 *

 

 

もしも

 

今日

 

みなさんの回りで

 

不思議な出来事が起こったら

 

それは隆夫さんのせいかもしれません。

 

 

どうか

 

どうか

 

良いことでありますように。

 

一日中祈っています。

 

 

 

 

 

では、また。

 

 

 

 

追伸

 

4月23日 12時~

 

『東京砂漠』やります!