ども、今回の鳥取県知事選の出馬を見送った岡田達也です。

 

 

 

 

 

昨日のつづき。

 

(昨日も書きましたが、ここから先の話は昭和50年代前半の話です。現代においては不適切な行動、発言が多発します。それをご理解の上お読みください。)

 

 

 *

 

 

父・隆夫さん(87)の後について

 

人生初めての雀荘に足を踏み入れた。

 

僕の記憶が間違いじゃなければ7歳の時だ。

 

 

……7歳だぞ、7歳?

 

 

その年齢で雀荘に足を踏み入れた人間なんて

 

親が雀荘を経営している家庭環境に育った二階堂瑠美・亜樹姉妹(EX風林火山)ならともかく

 

一般の子供では珍しいのではなかろうか?

 

 

ここから先は、僕の記憶だ。

 

ひょっとすると全てが正しい可能性もあるし、

 

すっかり塗り替えられている可能性もある。

 

だが、

 

僕の中ではこれが正解だ。

 

 

父の後に付いて入った店内は

 

煙草の煙が充満していた。

 

男4人ずつがテーブルを囲んで座っていて

 

そこはけっして楽しげではなく

 

やや重苦しい雰囲気の中

 

麻雀牌を叩きつける音だけが異様に響いていた。

 

(そのように感じられた)

 

 

『千と千尋の神隠し』に出てくる湯婆婆みたいなおばさんが僕に声をかけた。

 

「ぼうず、こっちにおいで」

 

僕は言われるがままに湯婆婆に付いて行った。

 

 

その卓には誰も座っておらず

 

おそらくは先ほどまで誰かが使っていたであろう麻雀牌が散らばっていた。

 

「これを、このおしぼりで磨くんだ」

 

僕は、

 

今の世の中では見る機会の少なくなった、

 

昭和特有の、喫茶店で出されていた、厚手のおしぼりを手渡された。

 

 

“学校の廊下を雑巾がけする”のではない

 

(今の時代でも雑巾がけってやってるのだろうか?)

 

“大晦日に家の窓ふき”をするのでもない

 

 

7歳の子供が

 

初めて入った雀荘で

 

麻雀牌を磨くんだぞ?

 

 

……どうだ?

 

今、これを読んでるみなさんは

 

「こいつに比べれば自分の子供時代は幸せだったかも」

 

ということを今一度噛みしめてほしい。

 

 

「これを、ですか?」

 

「全部で144枚あるから、それをキレイに磨くんだ」

 

「……」

 

「で、磨いたら、萬子(マンズ)、筒子(ピンズ)、索子(ソウズ)に分けて、1~9の順に並べてーー」

 

「……マンズ?」

 

「見ればわかるだろ? 同じ種類の牌を並べりゃいんだよ」

 

「はい」

 

 

……え?

 

父・隆夫さんがそのとき何をしていたかって?

 

もちろん、すでに卓に着いて麻雀を打ってましたよ

 

 

話を戻そう。

 

僕は144枚の麻雀牌を磨き、種類ごとに並べた。

 

その作業を一卓だけやったのか、二卓やったのか、

 

そのあたりの記憶は定かじゃないけど

 

その後のことは鮮明に覚えている。

 

 

湯婆婆に呼ばれた。

 

「ぼうず、こっちにおいで」

 

言われるがままに雀荘の裏口に行くと

 

そこは上り框(かまち)になっていて

 

その先は小さな部屋になっていた。

 

 

六畳ほどの大きさだったろうか?

 

真ん中に昭和特有の円卓(ちゃぶ台)があって

 

その上に

 

お皿に盛られたアジフライとキャベツの千切り

 

それに、ごはんとお味噌汁が置いてあった。

 

 

3人分。

 

 

そこには僕だけじゃなく

 

他に二人の子供が座っていた。

 

どうやらその子たちは

 

その家の子供らしかった。

 

 

湯婆婆が言った。

 

「お食べ」

 

「いただきます」

 

 

もう一度言う。

 

7歳だか8歳の子供が

 

見ず知らずの場所(雀荘)で

 

麻雀牌を磨き

 

その見返りとして

 

初めて会う子供たちと食卓を囲み

 

アジフライを食べるーー

 

これがドラマでも映画でもなく

 

現実の世界で起きていた出来事なのだ。

 

 

どうだ?

 

大事なことなのでもう一度言う

 

みなさんの子供時代がどれだけ幸せかわかっただろ?

 

 

さておき

 

こんな原体験があるのに

 

「麻雀は健全なゲームです」

 

などと思えるはずがない。

 

その怪しさ、胡散臭さは幼心に強烈に擦り込まれた。

 

 

だから麻雀を覚えることに抵抗があった。

 

きっと母・秀子さんも悲しむだろうし。

 

 

それなのに

 

ああ、それなのに

 

僕はクラスメイトの森くんに麻雀を教わってしまった。

 

 

そうそう

 

森くんはお父さんに麻雀を教わったそうだ。

 

そしてお母さんも含めて家族麻雀をやっていると言っていた。

 

 

そんな幸せな家庭があるのかーー

 

そう思ったことも忘れられない。

 

 

 

 

 

つづく