ども、久しぶりに食べたキンパが大当たりで上機嫌の岡田達也です。

 

 

 

 

 

先月亡くなった僕の伯母・吉恵さん(享年92)

 

高齢な彼女の面倒をみるために

 

3年ほど前から同居していた妹の多鶴子さん(82)。

 

ようやく事後処理に目処が立ったらしく

 

(まだまだやることはたくさんあるらしいけど)

 

明日、東京へ帰ることになった。

 

 

これから僕が倉吉市まで迎えに行って

 

我が家に一晩泊まり

 

明日の朝、鳥取砂丘コナン空港まで送る予定になっている。

 

(どうでもいいが空港名が長いな)

 

 

老々介護を3年間もがんばったのだ。

 

せめて美味しいものでも食べさせてあげよう、そう考えた。

 

 

 *

 

 

「何か食べたいものある?」

 

「う~ん」

 

「なんでも言ってよ、ご馳走するから」

 

「ありがたいんだけど、最近、食欲がなくて」

 

「そう」

 

「食べないとダメだ、って思うから食べるけど、これと言って欲しいものが浮かばんだが」

 

「とうふちくわ(鳥取の名産品)は? 好きだったじゃない」

 

「いらんなぁ」

 

「かに寿司(駅弁。京王百貨店駅弁大会の第一回売上高ランキング1位)は?」

 

「そうねぇ、かに寿司なら食べられるかなぁ」

 

 

「食べられるかなぁ」よりも

 

「食べたい!」ってものを食べさせてあげたいと思うのだが

 

それはこちら側の勝手な気持ちであって

 

多鶴子さんの体調が一番大事なことは承知している。

 

無理はしてほしくない。

 

 

「じゃ、明日、迎えに行ったときにでもいいから、思いついたらリクエストしてよ」

 

「そうするわ」

 

「うん」

 

「お兄ちゃん(我が父・隆夫さん)には何を食べさせるの?」

 

「まだ決めてないけど、あなたの食べたい物に合わせて考えようかと思ってる」

 

「お兄ちゃん、まだ食欲あるの?」

 

「あるよ。普通にある」

 

「……ダメだ」

 

「なにが?」

 

「お兄ちゃん、私より長生きするわ」

 

「勘弁してよ」

 

「たつや、ホントにな、食べるってことは生きることだで」

 

「そうは思うけど」

 

「お姉ちゃんが亡くなる前、あんなに食べる人だったのに食が細くなってなぁ」

 

「そう」

 

「そうよ。これはまずいなぁ」

 

「まずい?」

 

「お兄ちゃんが長生きしても喜ぶ人は誰もいないじゃない?」

 

「……それ、息子に言うか?」

 

「私が仕留めて帰ってもいいんだけどーー」

 

「言い方」

 

「今から刑務所に入っちゃうと、お姉ちゃんの事後処理ができんようになるしなぁ」

 

「……どうやって仕留める気?」

 

「やりようはいくらでもあるわよ」

 

「そう?」

 

「餅をのどに詰まらせるとか」

 

「原始的だな」

 

「滑って転んで頭を打つとか」

 

「基本、本人任せなんだ」

 

「なんにせよ、明日までに考えておくわ」

 

「いやいや、仕留める方法じゃなくて、食べたいものを考えておいて」

 

「あ、そう。そっちね?」

 

「そっち」

 

「わかった。じゃ、明日、待ってるね」

 

「うん」

 

「あっ!」

 

「なに?」

 

「あんたの焼いた卵焼きが食べたい!」

 

「あぁ」

 

「あれは美味しいわ。お金が取れる」

 

「ありがとう。じゃ、卵焼きは決まりね」

 

「卵、高いけど大丈夫か?」

 

「うちは金持ちじゃないけど卵くらいは買えるわ(笑)。任せとけ」

 

 

 *

 

 

“愛と毒”でできている叔母も

 

少々お疲れ気味のようだ。

 

卵焼きで労ってあげようと思う。

 

 

唯一の不安は

 

今夜

 

我が家が殺人現場になってしまわないか?

 

という点だ。

 

 

どうか平穏無事に過ごせますように。

 

 

 

 

 

では、また。