ども、一計を案じた岡田達也です。

 

 

 

 

 

主な登場人物

 

・私

 

・私の父・隆夫さん(87)

 

・Aさん(葬儀屋さん)

 

 

 *

 

 

昨日のつづき。

 

 

「私は父の性格を熟知していますので、ここは慎重に進めたいです」

 

「と、おっしゃいますと?」

 

「まず、互助会のシステムを利用した場合ですがーー」

 

「えぇ」

 

「月々積み立てたとしても“途中でやめてしまう”、あるいは“再び解約してしまう”可能性があります」

 

「……えぇ」

 

「多々あります」

 

「……」

 

「あるんです」

 

「……残念ですがありますね」

 

「えぇ、とても危険です」

 

「はい」

 

「次に、プラチナサポートの方で契約した場合ですがーー」

 

「えぇ」

 

「仮に20万円を父から引き出して、一括でお支払いしたとしましょう」

 

「はい」

 

「敵はーー」

 

「敵?」

 

「また間違えました。父です」

 

「ですよね」

 

「父はそれで「葬儀代金のすべてを支払った」と勘違いする可能性が高いです」

 

「……なるほど」

 

「いや、「可能性が高い」と言いましたが、間違いありません」

 

「そうですか」

 

「そうなると彼は、“自分は葬儀代金を残したのだからそれ以外は1円も残さないでいいはずだ”と考えます」

 

「……」

 

「“大丈夫だ、親としての責任は立派に果たしたぞ”」

 

「……」

 

「“お父さんはやるときにはやる男だ”」

 

「……」

 

「“さ~て、残りの年金、心置きなく使おう”」

 

「……ありえますね」

 

「残念ですが、どんなに小規模にしようと葬儀は20万円ではすみません」

 

「えぇ」

 

「必ず不足分は出てきます」

 

「そうですね」

 

「父の妹たちもみんな高齢ですから、鳥取まで香典を持ってこさせるのも忍びないですし、そこはあてにしたくありません」

 

「はい」

 

「父には、自分で、自分の葬儀代金を、用意させたいのです」

 

「はい」

 

「そこで僕のアイディアですがーー」

 

「はい」

 

「私がプラチナサポートの方で契約して、20万円を一括でお支払いします」

 

「はい」

 

「で、父には「互助会の方で、私名義で契約した」と言います」

 

「はい」

 

「で、「私の口座から月々5,000円ずつ引き落とされることになったので、私に5,000円ずつ払え」と言います」

 

「なるほど」

 

「私が取り立てるんです」

 

「いいですね」

 

「私の口座から引き落とされている、というのがポイントです」

 

「はい」

 

「さすがに疑いはしないでしょうし、多少は良心が痛むでしょう」

 

「はい」

 

「自分で勝手に解約したものを、息子が再び契約してくれたのですから」

 

「はい」

 

「これが最も確実な方法かと」

 

「はい」

 

「ただしーー」

 

「?」

 

「その場合は40回払ってもらって20万円となるので、この先40ヶ月父が生きることが前提となります」

 

「はい」

 

「3年以上先です」

 

「はい」

 

「完済できたとすれば90歳を超えて生きているということになります」

 

「はい」

 

「逆に、早めに死なれたら私は「踏み倒された」と思うでしょう」

 

「はい」

 

「どちらになっても私にとってはいばらの道です」

 

「お察しします」

 

「でも、これが一番良い方法な気がします」

 

「お話を伺ってみてーー」

 

「はい」

 

「私もそれが一番良いかと思いました」

 

「そうですか?」

 

「ご家族それぞれに事情はあります」

 

「はい」

 

「岡田さんの家の場合は、今提案された方法がベストかと」

 

「ありがとうございます」

 

「素晴らしいアイディアです」

 

「それほどでも」

 

「それでは証書の方も、お父さまではなく、達也さま宛にしておきましょう。お父さまの目には触れないように」

 

「助かります」

 

「協力できることは何でもやりますのでおっしゃってください」

 

「ありがとうございます」

 

「では、契約書をお持ちしますね」

 

 

 

 

 

つづく