ども、歳を取っても健康で歩いていたい岡田達也です。

 

 

 

 

 

父・隆夫さん(87)が

 

「おとうさん、あほぅだけなぁ~」

 

と切り出したら、それは危険信号だ。

 

 

自らのことを1ミリもアホだと思っていない人間がへりくだるのには

 

何かしらの理由がある。

 

必ずある。

 

 

そして、

 

それは僕にとって恐怖の言葉でしかない。

 

「エコエコアザラク」もかなり恐ろしい呪文だったが

 

その比ではないと言っていい。

 

身震いどころの話ではない。

 

 

今までの歴史を紐解くと

 

「おとうさん、あほぅだけなぁ」に続く文は

 

「携帯がどっかいったみたいでなぁ」が30回くらい

 

「請求書を間違って捨てたみたいでなぁ」が5回くらい

 

「10万円落としたみたいでなぁ」が1回ある。

 

(達也調べ)

 

 

「なんだ、大したことないじゃない。よくある話だよ」

 

と思われるかもしれない。

 

確かにその通りだ。

 

落とし物、失くし物、

 

それは僕だってしょっちゅうする。

 

 

だが、

 

少なくとも、

 

僕は、僕自身で、後始末する。

 

探す努力をし、見つけ出す。

 

 

隆夫さんの場合

 

いくら謙虚に「あほぅだけなぁ」と言ったところで

 

その後始末(探す行為)をするつもりは微塵もないのだ。

 

200%、そう言い切れる。

 

 

で、

 

口に出すことはないが

 

二つ目の声で

 

「すまんけど頼むわ」

 

「なんとかしてくれ」

 

という言葉を発しているのが僕には聞こえてくる。

 

 

 *

 

 

一昨日の夜

 

夕食の準備を済ませ

 

テーブルに料理を並べ

 

僕が缶ビールを一口飲んだときだった。

 

それは僕にとって至福の瞬間であって

 

何人たりともそれを邪魔してはイケナイ時間だ。

 

 

しかしーー

 

隆夫さんが口火を切った。

 

「おとうさん、あほぅだけなぁ」

 

「!!!!!」

 

 

おいおいおいおいおいおいおい

 

もしもしもしもしもしもしもしもし

 

まてまてまてまてまてまてまてまて

 

 

すでに事件は発生してしまったのか??

 

いや、確実に発生しているな

 

 

「……なに?」

 

「パチンコ屋のカード、持って帰ってしてまってなぁ」

 

そう言いながらポケットからICカードを取り出して、こちらに寄越した。

 

 

パチンコされない方のために説明すると

 

このICカードに出玉を貯玉したり、

 

また、投資したお金の残金が入っていたりするので

 

最後にそれを現金に清算するのだ。

 

それがその日の“勝ち分”となる。

 

 

そしてこのカードは

 

その日のうちに清算しなければならないという

 

日本全国共通の、鉄の掟がある。

 

仮に100万円入っていようが

 

どんなに泣きついても翌日以降では無効となってしまう。

 

 

「これなぁ、今日中に換金せないけんか?」

 

「うん」

 

「明日じゃダメか?」

 

「ダメだね」

 

 

 

 

 

つづく