ども、豚バラの脂でこんがり焼かれたい岡田達也です。

 

 

 

 

 

父・隆夫さん(87)は

 

昔から何もできない人だった。

 

6人姉弟の中で男一人という境遇だったからか

 

炊事、洗濯、掃除、など

 

一切の家事ができない人で

 

「……あんたは殿様か?」

 

と言いたくなるほど生活力の無い人に育った。

 

 

2017年11月

 

母・秀子さんが他界した。

 


隆夫さんの姉・吉恵さんは長女で

 

幼いころから弟や妹たちの面倒をみてきた人なので

 

残された隆夫さんをとても心配した。

 

 

秀子さんが亡くなってすぐに

 

パナソニックの

 

とても高価な

 

とんでもなく立派なホットプレートを購入し

 

我が家に送ってくれた。

 

 

 

僕がお礼の電話をかけた。

 

「おばちゃん、ホットプレートありがとうね」

 

「隆夫さんは何にもできん人だけなぁ」

 

「そうね」

 

「料理もからっきしだろ?」

 

「米を炊くのと、トースト焼くくらいかな」

 

「そうだろ?」

 

「うん」

 

「でもな!」

 

「うん」

 

「ホットプレートがあれば大丈夫だ!」

 

「?」

 

「どんな人でも、誰にでも、隆夫さんでも、簡単に料理ができるけな!」

 

「……そうか?」

 

「できるわいな! 肉をのせておけば焼肉になるだで!」

 

「いや、まぁ、そうだけど」

 

「大きな肉をのせればステーキになるだで!」

 

「いや、まぁ、そうだけど」

 

「魚をのせたら焼き魚になるだで!」

 

「いや、まぁ、そうだけど」

 

「卵をのせたら目玉焼きになるだで!」

 

「いや、まぁ、理屈としては正しいんだけどねーー」

 

「なによ?」

 

 

あの、

 

殿様気質の隆夫さんが、

 

目玉焼きを焼くのに、

 

35㎝×50㎝もあるホットプレートをわざわざ準備するとは思えないよ……

 

って言おうとした。

 

 

けど、やめておいた。

 

せっかくの厚意を無駄にしてしまうようで。

 

 

「いや、なんでもない。ありがとうね」

 

僕はお礼を言って電話を切った。

 

 

 *

 

 

それから1年3ヶ月後

 

僕は鳥取に戻った。

 

 

ホットプレートは新品のまま

 

開封もされずに置いてあった。

 

予想通りだった。

 

残念だが、吉恵さんより僕の方が隆夫さんを熟知している。

 

 

だけどね、おばちゃん

 

安心して

 

 

このホットプレートは

 

僕の鉄板として大活躍しているから

 

焼肉はもちろん

 

お好み焼きの関西風も広島風も

 

このプレートの上で最高の仕上がりをみせてくれているよ

 

毎回焼きながら

 

「これ、金取れるんじゃね?」

 

って自画自賛しているよ

 

隆夫さんも喜んで食べてくれるから結果オーライだよね?

 

 

ってことで昨夜も美味しくいただきました

 

本当にありがとうね

 

 

 *

 

 

「豚に真珠」

 

「猫に小判」

 

その並びに新たに加えてほしい。

 

「隆夫にホットプレート」

 

を。

 

 

 

 

 

では、また。