ども、小麦は大好きな岡田達也です。

 

 

 

 

 

昨日、おでんの話を書いた。

 

 

その中で「ちくわぶだけは納得いかない」と

 

“全国ちくわぶ愛好家”のみなさんを敵に回す発言をした。

 

 

特に多いと思われる関東圏の方を敵に回したくないので

 

今日は「なぜ納得いかないのか?」の言い訳を書き記しておこう。

 

(大昔にも書いた話なので、覚えている方がいらっしゃるかもしれませんが、お付き合いください)

 

 

 *

 

 

大学を卒業し東京に出てきた僕は

 

吉祥寺にある小さな会社で働き始めた。

 

まだ、お給料が、茶封筒で、手渡しだった時代の話だ。

 

 

今思えば大した額ではなかったけど

 

それでも貧乏な若者にとって

 

給料日だけは「小金持ち」な気分を味わえた。

 

 

僕が給料をもらったら、やりたかったことが二つあった。

 

一つ目は

 

「少額でいいから母親に送る」

 

二つ目は

 

「屋台でおでんを食べながら熱燗を飲む」だった。

 

 

幸い、当時の吉祥寺駅前には屋台が出ていた。

 

僕は

 

給料袋を握りしめ

 

目を付けていた

 

おでんの香りが漂う屋台に入った。

 

 

練りものが好きなので平天はマスト

 

あとはやっぱり大根だろう。

 

そんな感じで

 

頼み過ぎないように

 

(金額が書いてなかったので、恐々だったんです)

 

少しずつ頼んでいたときだった。

 

 

大将が言った。

 

「ちくわぶ、あるよ」

 

 

……はっ?

 

……ちくわぶ?

 

「ぶ」って言ったぞ「ぶ」って

 

なんだそれ???

 

 

そのとき生れて初めて耳にした名前だ。

 

まあ、でも……

 

おそらく「ちくわ」に近いものだろうなぁ

 

それ以外に想像が付かないもんなぁ

 

練りものが大好きだったこともあるし、

 

何より

 

お店の人に勧められた物を断るなんて無粋な行為だと思っていたお年頃なので

 

「じゃ、ください」と頼んでしまった。

 

 

 *

 

 

人というのは

 

食べ物を前にしたとき

 

ある程度“味のイメージ”を持つ生き物ではないだろうか?

 

頭で想像していたものと

 

口に入ったときの誤差が大きければ

 

それはトラウマにさえなりえるほどの事件と言っていい。

 

 

上手い例えが見つからないがーー

 

強引に書くなら

 

出されたものがアイスコーヒーだと思って口にしてみたら

 

炭酸を飛ばしたコーラだった場合

 

脳がパニックを起こすのではないだろうか?

 

僕なら口から吐き出してしまうかもしれない。

 

 

 *

 

 

もう、ごちゃごちゃ書かなくてもいいだろう。

 

 

「ちくわ」だと思って齧りついた瞬間

 

小麦粉の「ねちょ」っとした感覚が

 

前歯と、舌に絡みついたとき

 

僕の脳はパニックを起こした。

 

 

こ、こ、これ!

 

ね、ね、練りものじゃなくて!!

 

こ、こ、小麦粉じゃね~かっ!!!

 

 

なんとか吐き出すことなく

 

強引に一口目を飲み込んだが

 

そのあと「……うそっ」と口から出てしまった。

 

 

こうして

 

僕が憧れていた22歳の屋台デビューは

 

ほろ苦い結末を迎えた。

 

 

あれから30年以上経ったが

 

あれを最後に一度も食べていない。

 

「ちくわぶ愛好会」のメンバーである左東広之(劇団の後輩)に

 

どれほど力強くちくわぶの魅力を語られても

 

心が動くことはなかった。

 

 

この先、ひょっとするとチャレンジする日が来るかもしれないが

 

あの32年前の衝撃を覆すほどの好印象になるとは思えないし……

 

 

ちくわぶ好きのみなさん

 

すみません

 

偽らざる正直な思いなんです

 

 

許してやってください

 

 

 

 

 

では、また。