ども、3年ぶりにブリーチした岡田達也です。

 

 

 

 

 

「ゆうこりん」と聞けば

 

コリン星からやってきた小倉優子ちゃんを思い浮かべる方が多いだろう。

 

しかし

 

演劇界隈で「ゆうこりん」と言えば

 

ヘアメイクアップアーティストの武井優子さん一択となる。

 

数多くの劇団や俳優さんの髪の毛を手掛けている方だ。

 

僕は25年も前からお世話になっている。

 

 

ゆうこりんの腕は確かなのだが

 

とにかくよくしゃべる。

 

仮に60分サロンにいたとしたら

 

58分は彼女の話を聞く時間となる。

 

その覚悟があって、初めて彼女のお店に行く資格が得られる。

 

 

昨日

 

本番に向けて男前に変身するべく

 

武井さんのサロンに向かった。

 

 

もちろんお芝居の中身だけで男前になれれば理想的だが

 

その点に関しては大いに不安があるので

 

“利用できるものはすべて利用する”という自分の流儀に則って

 

武井さんの力を借りることにした。

 

 

(以下、武井さんの声は、いかりや長介さんを少し若くして女性に変換した感じで、ややルーズに読んでもらえると、より臨場感が出ます)

 

 

 *

 

 

「おっか~、今回はどうすんの~?」

 

「世襲戦隊カゾクマンってお芝居でーー」

 

「あぁ、あれね~」

 

「えぇっ、覚えてるの?」

 

「覚えてるわよ~。1も2も3も私が切ってるでしょ?」

 

「そうそう!」

 

「あの歌舞伎町のホストみたいに仕上げたやつね?」

 

「それそれ! すごいね、よく覚えてるね!」

 

「出来損ないのホストね」

 

「……出来損ないは余計だよ」

 

「今回も?」

 

「そう、同じ役だからあの感じで」

 

「最初さぁ、あんたがさぁ「ガクトみたいにして」って言ってきたときは驚いたわよ」

 

「なんで?」

 

「そういう発言は鏡で自分の顔見てから言いなさいって!(笑)」

 

「……」

 

「ま、やりたい髪型はわかったわ」

 

「よろしくお願いします」

 

「(しばらく僕の髪の毛を手で触りながら)ちょっと、あんたっ!」

 

「なに?」

 

「これ、誰に切ってもらったのっ?」

 

「えっ?」

 

「(鳥取で)いつもやってくれる人じゃないでしょ?」

 

「ええっ? わかるの?」

 

「あたりまえよ!」

 

「実は、いつもの人に切ってもらおうと予約していたんだけど、前日にその人がコロナに感染して、急遽別の、初めての人に切ってもらったの」

 

「あぁっん!」

 

「……なに?」

 

「切っちゃダメなところが切ってあるし、伸ばしちゃダメなところが伸びたままよ!」

 

「……そうなの?」

 

「いつもの人は、あんたのクセ(頭の形)をだいぶ理解してるみたいだけど、この人はまだまだね」

 

「はぁ、すごいね」

 

「これじゃ出来損ないのホストにしかならないわ!」

 

「……あの~、カッコよくていいんだけど。いや、むしろそうしてほしいんだけど」

 

「ま、やれるだけやってみるけどね。限界ってもんがあるのよ」

 

「よろしくお願いします」

 

「あ、私のライン読んだわよね?」

 

「うん」

 

 

実は武井さん

 

数ヶ月前に転倒し

 

右肩を「腱板断裂」という大きなケガに見舞われ

 

現在、リハビリの最中で

 

カットはできるもののシャンプーが苦しいらしく

 

「シャンプーは自分でやってね」

 

というラインが来ていた。

 

 

美容室に来て自分でシャンプーなんて生れて初めてだが

 

ま、これも貴重な経験と受け止めておこう。

 

 

まず、いつものように縮毛矯正から始まった。

 

薬剤を塗りながら

 

武井さんがしみじみと言った。

 

「あんたさぁ、顔変わったよね」

 

 

……顔が変わった?

 

それは最近の話?

 

それとも長いスパンの話?

 

 

「そうかな?」

 

「『クローズ・ユア・アイズ』で、あんたと初めて会ったときさぁーー」

 

 

 

 

 

つづく