ども、居酒屋メニューでは「ニラ玉」が好きな岡田達也です。

 

 

 

 

 

「よくあれだけのセリフを覚えられますね」

 

と感心されることがある。

 

 

……なるほど

 

そう見えるものかもしれない

 

 

たしかに僕がお客さんとして芝居を観に行くときも

 

「この人、よくしゃべるなぁ」とか

 

「よくぞこれだけ覚えたな」と感心することがある。

 

 

断っておくが、けっして楽々覚えられるものではない。

 

 

ヒーヒー言いながら叩き込んでいる

 

あるいは

 

ビニール袋を無理やり伸ばして、詰め放題のお菓子のようにギューギュー押し込んでいる

 

といった感じであって

 

まさに「セリフと格闘している」と言っていい。

 

 

何度も何度も読み返して

 

「ようやく入ったかな?」

 

という手応えがあったとしても

 

翌朝にそのシーンをしゃべってみると

 

まったく入ってなかったなんてことはザラにある。

 

 

そして

 

「……昨夜のあれは何だったんだ?」

 

と自分に幻滅しながら、ちょっぴり涙する。

 

その繰り返しだ。

 

 

 *

 

 

昨日

 

台本を読みながらフト思った。

 

 

「俺、これから3本分の芝居のセリフを覚えるんだよな……」

 

「これは間違いなく、かなりの分量だよな」

 

「今はまったく入ってこないけど、本番までにはどうにかして入れるんだよな」

 

「そうしないと2度と使ってもらえないもんな」

 

「考えてみれば、この30年、たくさんのセリフを覚えてきたよな」

 

「こんな自分でもやればできるもんだな」

 

「……おや?」

 

「ちょっと待てよ」

 

「セリフを覚えるってのは、基本的には暗記するって作業だよな」

 

「この記憶する力を、学生時代に発揮していたら、もう少し成績優秀だったんじゃないのか?」

 

「勉強ってのは「考える力を身に付ける」ことではあるけど、まずは覚えるということから始まるもんな」

 

「今は一生懸命覚えているのに」

 

「あのとき、どうして本気を出さなかったんだ、自分?」

 

「ひょっとして隆夫の息子だからだろうか?」

 

「そんなとこだけ似てしまったのか?」

 

「いや、まてまて」

 

「血のせいにするんじゃないよ」

 

「完全に怠け者の努力不足だよ」

 

「中学2年生という勝負所で脱落した自覚あるもんな」

 

「あそこで踏ん張っていたら、違う高校に行って、違う大学に入ってたんだろうな」

 

「あっ」

 

「でも、そうなったら高木先生(※)に出会えてないわけだから、100%演劇はやらなかっただろうな」

 

(※ 大学時代の恩師。僕に芝居をやれと言ってくださった方)

 

「う~ん」

 

「それも悩ましいとこではあるな」

 

「……」

 

「……」

 

「はっ!」

 

「ダメだ!」

 

「こ、これはっ!」

 

「いつもの現実逃避じゃね~か!!!」

 

 

 *

 

 

こう見えて、若いころはセリフを覚えるのは早かった。

 

何度か読めばスッと入ったものだ。

 

でも、今は違う。

 

セリフを覚えるのはとても苦しい。

 

苦しいとすぐに逃げたくなる。

 

するとおかしな現実逃避が始まる。

 

しばらくして時間の浪費だと気付く。


仕方なく台本に向かう。

 

やるしかないのだ。

 

誰かが助けてくれるわけじゃないし。

 

「がんばれ、俺!」と尻を叩く。

 

 

 *

 

 

俳優とは(少なくとも僕は)

 

これを繰り返しながらセリフを覚えていくのだ。

 

 

あ~

 

学生時代ちゃんと勉強してたら

 

今ごろは鳥取県知事になってたかな?

 

 

 

 

 

では、また。

 

 

 

追伸

 

昨日の夜

 

父・隆夫さんに「もうパチンコは行かん!」と宣言されました。

 

今度は「ず~っと行かん!」だそうです。

 

「ず~っと」がどれほどの長さなのか?

 

観察していきたいと思います。