ども、カレーは福神漬けよりらっきょうを合わせる岡田達也です。

 

 

 

 

 

父・隆夫さん(87)の

 

家庭内での唯一の仕事は

 

“炊飯”だ。

 

 

米を研ぎ、炊飯器にセットし、スイッチを入れる。

 

たったこれだけのことだが、とても大事なことだ。

 

 

僕がやれるときは僕が炊いているのだけど

 

炊飯だけでも手伝ってもらえるとこちらも助かるし

 

なにより

 

ごくつぶしにーー

 

まちがえた

 

老人に仕事があるというのは大事なことだと思うので

 

極力甘えるようにしている。

 

 

「今日は一合炊いておいて」

 

「今日は焼きそばにするから炊飯はいいや」

 

「今日は昨日の残りのごはんがあるから大丈夫」

 

など

 

その日の朝に、台所を預かるシェフ(私)から炊飯のオーダーが入る。

 

 

 *

 

 

昨日

 

僕は朝早くから美容院の予約を入れていたので

 

朝、隆夫さんと顔を合わせないまま家を出た。

 

 

美容院で家にある食材を思い浮かべた。

 

あれとあれが残ってたよな……

 

よし、今日はカレーにしよう!

 

 

カレーを作るなら、ご飯もおいしい方がいい。

 

“米がマズいカレーは世の中から抹消したい”

 

常日頃からそう考える僕は

 

今日は父上に頼まないで

 

自称「鳥取で二番目に美味しい飯を炊く男」な自分が炊飯を担当しようと考え

 

隆夫さんにメールした。

 

「今日はカレーにします。炊飯は僕がするので大丈夫です」

 

 

数分後

 

返信があった。

 

 

「了解です、今日もう一日でて来ます あしからず 父」(原文まま)

 

 

これを読み解くと

 

「了解です。今日も昨日に引き続きパチンコに出かけてきます。なので、どのみち炊飯はできません。あしからず 父」

 

という意味だ。

 

 

……うん

 

……そうね

 

「あしからず」は

 

「相手の意向に添えないで済まないという気持を表す語。悪く思わないでください」

 

という意味だから

 

このメールの中で正しい使い方ではあるんだろうけどーー

 

 

 *

 

 

ちょっと愚痴を言っていいですか?

 

なんかね

 

イラっとしたんですよ

 

してしまったわけですよ

 

いっそのこと「了解」だけなら何も思わなかったんでしょうけど

 

そのあとの2センテンスが

 

僕の神経を逆撫でしてくるわけですよ

 

してきたんですよ

 

僕は思わず美容院でため息をつきましたよ

 

カットしてくれてる男の子に「どうかしましたか?」って訊かれましたよ

 

「あ、大丈夫」って言いましたよ

 

 

……なんでしょうね、この言葉にできない胸のモヤモヤ?

 

 

 *

 

 

今日こそ炊飯してもらおうと思います。

 

 

 

 

 

では、また。