ども、早くも千穐楽を迎える岡田達也です。
演劇のいろんな現場で
若い俳優さんたちにこう言われる機会が増えた。
「僕、褒められて伸びるタイプなんですよね~」
これ、冗談なら許せるが
本気だったらかなり危険だ。
ま、これも時代の流れなんだろうなぁとは思うけど。
*
演劇の世界にこんな言葉がある。
「役者殺すにゃ刃物は要らぬ。ものの三度も褒めりゃよい」
この正確な続きは
「恐ろしいのは無条件にほめられ、チエをつけられて頭でっかちとなった人間が、頭の重みに耐えかねて、足を踏みすべらせることである。寄ってたかってほめて落とすのは他人だが、立ち上がるのは自分一人である」
という、劇作家・菊田一夫さんの言葉。
で、
この戒めの意味とはちょっと違うんだけど
この言葉はもう一つの側面もあって。
芝居って恐ろしくデリケートな部分があり
例えば
ある役者のあるセリフを褒めると
それまで込められていたニュアンスが微妙に変化していく。
恐ろしいのは
その変化が必ずしも良い方向にばかり転がっていくわけじゃない、ってこと。
褒められて自信が付くと欲が出る。
もっと、もっと、という姿勢は素晴らしいと思うが
一度、色気づいてしまったセリフは
大切なものを失ってしまい
そして残念なことに、もう二度と元には戻らなかったりするものだ。
だからといって
「そんな芝居じゃダメだ」
「そのセリフじゃダメだ」
ばかりを連発していてもよろしくないのは確かで
良くなった点をキチンと伝えてあげるのは必要なことだとは思う。
きっと“褒める”のもさじ加減なんだろう。
*
本日、千穐楽です。
まずは無事に完走すること。
これが第一義。
次に
今日のお客さんに今の自分の精一杯をお届けすること。
その結果として
お客さんに褒められるのが一番の理想だよね。
ただただ芝居をやって
誰かに褒められるなんてことはありませんよ。
あくまでも僕の経験上だけど。
では、また。