ども、グラタン作りに自信がある岡田達也です。

 

 

 

 

 

昨日のつづき。

 

 

 *

 

 

父・隆夫さん(87)が

 

メガネをソファの上に置いて、その上に座って壊してしまったという。

 

 

「その壊れたメガネはどうしたの?」

 

「ちゃんと取ってあるで」

 

「見せて」

 

 

隆夫さんはメガネケースから出してきた。

 

 

バラバラじゃねーか……

 

しかもよく見りゃ、壊れてしまった部分を瞬間接着剤でくっつけようとした跡が残ってるし……

 

僕はため息をついた。

 

 

「はぁ、こりゃ、ダメだな」

 

「ダメかえ?」

 

「うん。フレームは直せないと思う」

 

「接着剤で試してみただけどなぁ」

 

「つかなかったでしょ?」

 

「ようけ塗ってみただけどなぁ」

 

「量の問題じゃなくて、ここまで壊れたら無理だよ」

 

「ええっ! ええっ!」 

 

「?」

 

「これ(古いメガネ)があるけなぁ! 尾崎さんのところ(古いメガネを買った店)で買ったこれがあるけ! これでええっ!」

 

 

……もしもし?

 

なぜ逆ギレする??

 

俺はまだ何も言ってないよ??

 

 

「いやいや。視力はどんどん悪くなっていくんだから。古いのだと見えにくいでしょ?」

 

「いや! 見えるで!」

 

「2年前に買ったときに度数を調整してもらったんだから。それより古いやつが見やすいわけないでしょ?」

 

「見えとるで! だけぇ、これでええ!」

 

 

断っておくがこの反応は「頑固な性格」から来るものではない。

 

この人はずっと周囲に迷惑をかけて生きてきたので、とにかく怒られることが多かった。

 

そのことによって「防衛本能」が強く働くようになってしまい、「断固拒否」の姿勢となって表れるのだ。

 

 

フム

 

ここは正攻法じゃダメかもな

 

隆夫さんにどれほどの情が残されているのかわからんが角度を変えてみよう。

 

 

「あのさーー」

 

「なんだ?」

 

「そのメガネ、誕生日プレゼントなんだよね」

 

「……」

 

「2年前の」

 

「……そうだなぁ」

 

「プレゼントした側の気持ちとしては、それを壊れたままにされて、古いメガネを使われるのも寂しいかぎりだよ」

 

「……」

 

「幸いレンズは無事みたいだから、フレームを買い替えるだけで済むと思うし」

 

「……」

 

「5月に何もしなかったから、誕生日と父の日のプレゼントを兼ねて、俺がお金を出すから」

 

「そうか?」

 

「うん」

 

「そうだなぁ!」

 

「……」

 

 

おいおい

 

手のひら返すの早すぎね~か??

 

 

「レンズは大丈夫だもんなぁ!」

 

「……」

 

「フレームがありゃええだもんなぁ!」

 

「うん」

 

「お店にあるわなぁ!」

 

「行ってみないとわからないけど、たぶんあるんじゃないかな」

 

「なら行ってみるか!」

 

「……」

 

「お父さんはなぁ、いつでもええけなぁ!」

 

「……」

 

「たっちゃんの都合の良いときでええけなぁ!」

 

 

こうして8日の水曜日

 

僕は父を連れて

 

開店と同時にお店に行った。

 

 

 

 

 

つづく