ども、今から部屋を引き払う岡田達也です。
本日、新潟へ移動。
向こうに着いても、どこかに飲みに行くわけでも、美味しいものを食べるわけでもない。
劇場とホテルの往復だけだ。
(……仕事で行くんだから、それでいいんだよ)
それでも、新潟に行けるというのは嬉しい。
* *
何年前だったか?
何の公演だったか?
そのあたりのことは思い出せないが、新潟で忘れられない思い出がある。
後輩の南塚康弘(現在は退団)が、
「達也さん、どうしても一緒に行ってほしい店があるんです」
と、珍しく自分から呑みに誘ってきた。
こちらが誘えばヒョイヒョイと付いてくる子だったが、自分から誘ってくるなんて初めてのことだ。
そんなに美味しいお店なんだろうか?
「呑み屋じゃなくて、寿司屋なんです」
「……おまえ、新潟で寿司屋なんて、足元みられてぼったくられるんじゃないのか?」
僕自身が痛い目を見た経験あるので、新潟の寿司屋には懐疑的になっていた。
「いえ、絶対にそんなことはありません」
「本当か?」
「逆に、とっても錆びれているお店でーー」
「うん」
「大将が1人でやってるんですけどーー」
「小さいお店なのか?」
「そうですね」
「たぶん70歳は過ぎてる大将で」
「いいじゃない」
「大将は良い人なんですけど」
「うん」
「お店全体がすごく暗くてーー」
「うん」
「テーブル席もあるにはあるんですが、そっちには明かりを入れてないんです」
「……おおっ」
「カウンターと、板場だけ、蛍光灯が付いててーー」
「そこは普通、白熱灯じゃないのか?」
「蛍光灯です」
「……そっか」
「僕はたまたま一人で入ったんですけど、すごく安いんですよ」
「まぁ、そうだろうな」
「ネタもほとんどなくて」
「……ネタが無い?」
「だからぼったくりなんてできる店じゃないんです」
「おい、まて」
「はい」
「ネタが無い寿司屋ってなんだよ?」
「いや、あるにはあるんですけど、上等なネタは無いです」
「……」
「あるもので勝負してます」
「……ま、そうなるわな」
「はい」
「じゃ、飲むのが専門のお店なのか?」
「いや、寿司もあります」
「……大丈夫か、その店?」
「なんとかやってるみたいです」
「ここ、新潟だぞ?」
「そうですね」
「海に面してる土地だぞ?」
「そうですね」
「海産物は豊富だろ?」
「だと思います」
「よく潰れないな?」
「えぇ。しかも、お客さんはいつも一人だけなんです」
「いつも?」
「はい」
「おまえ、そんなに行ってるのか?」
「2回行きました」
「そんなに行きたくなるお店なのか?」
「それが説明しにくいんですけどーー」
「うん」
「達也さんに判断してほしくて」
「何を?」
「いろんなこと」
「……おまえ、言ってることがよくわからんぞ?」
「そうだと思いますけど、お願いします」
「いつもお客さんは一人ってことは、その人は常連さんか?」
「ええ。女性なんですけど」
「うん」
「大将と同い年くらいの人で」
「うん」
「その人がまたくせ者で」
「?」
「カウンターの隅でいつもへべれけになって一人で飲んでるんです」
「……」
「瓶ビールだけを飲み続けてるんです」
「……」
「瓶が横になってたりします」
「……あれか? 昔、その大将と恋仲だったとかか?」
「さすが、達也さんっ! よくわかりましたね!」
「いや、それしか考えられんだろ? つーか、なんでおまえがそんなこと知ってるんだよ?」
「その女の人に話しかけられまして」
「うん」
「「あたいとこの人(大将)はね、時代が時代なら結ばれていたんだよ」って」
「……」
「毎回、同じ話を聞かされるんです」
「……おまえ、なんで2度も行った?」
「大将が良い人なんです」
* *
あぁ、もう時間がない。
部屋の片づけをしなければならないので、続きはまた。
と言いながら
もしかすると明日と明後日は日記をお休みするかもしれません。
もしも日にちが空いたらごめんなさい。
てか、大した話じゃないのでご安心を。
つづく
追伸
チケットの払い戻しについてのお知らせです。
該当する方はご確認ください。
よろしくお願いいたします。