ども、聖子ちゃんより明菜ちゃん派だった岡田達也です。
昨日のつづき。
*
明星ヘアカタログを手に美容室へ向かった。
『ヘアカットくれよん』という、今でも鳥取市内にあるお店だった。
“トシちゃん風のソフトカーリー”
目指すはそこだ。
そこだった。
そのはずだった。
*
今ならわかる。
アホな僕でもわかる。
毛質というのは、人それぞれ違う。
まったく違うということが。
太さも、量も、水分量も、色も、同じ人などいない。
そりゃ違って当たり前であって、
トシちゃんの写真を持っていって
「この頭にしてください」
と言ったところで、同じになるわけがない。
が、
僕は若かった。
トシちゃんのかっちょいいヘアスタイルが、
僕の頭の上に、
そのままのっかると信じていた。
*
「この髪型にしたいのですがーー」
「……トシちゃんですか」
店員さんの顔色が、若干、変わった気がした。
「はいっ!」
「……まったく同じというわけにはいかないかもしれませんが」
「大丈夫です!」
若者には、
明るい未来と、
果てしない希望しか見えてない。
「お客様はくせ毛なのでーー」
「よく知ってます」
「そういう方がこのようなパーマをかけられますと、強めに入ってしまう可能性もありますが……」
「大丈夫です!」
若者には、
目には見えない何かを信じる力が備わっている。
あのときのスタイリストさんがいくつくらいだったかは覚えていないが
15歳の若造が雑誌を手にして
自分の姿形を棚上げし
「トシちゃんの髪型にしてください」と
シャーシャーと放ったセリフを聞いて一体どう思ったのだろう?
僕の髪の毛にパーマ液が塗られ始めた。
つづく
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