ども、柴犬に目がない岡田達也です。

 

 

 

 

 

誰かを傷付けようと思って日々を生きてるわけじゃない。

 

そこだけは信じてほしい。

 

 

 *

 

 

我が家の近所には3本の川が流れていて

 

それぞれの土手沿いというのが

人だけでなくワンちゃんにとっても絶好の散歩コースとなっており

 

毎朝、毎夕

犬を連れた飼い主さんをたくさん見かける。

 

 

先日

 

土手を通りかかると

一匹の柴犬が座り込んでいた。

 

散歩の途中で休憩モードになってしまったのだろうか?

 

まったく動く気配がない。

 

飼い主さん(僕より一回りほど年上の女性)も

リードを手にしたまま

ワンちゃんが動くのを黙って待っている様子だった。

 

 

柴犬が大好きな僕は

吸い込まれるように近寄って行き

「こんにちは」と飼い主さんに挨拶した。

 

「こんにちは」

 

飼い主さんも挨拶を返してくれた。

 

これが田舎の良いところだ。

見知らぬ人に挨拶しても、引かれることはない。

 

こんな単純なコミュニケーションも

もはや都会では難しいだろう。

 

 

「かわいいワンちゃんですね!」

 

「そうですか。ありがとうございます」

 

「お名前は?」

 

「カズっていいます」

 

 

おおっ!

キングカズと同じじゃないかっ!

 

 

「男の子ですか?」

 

「そうです」

 

「年齢は?」

 

「5歳です」

 

「ちょっと触らせていただいてもよろしいですか?」


「どうぞ、どうぞ。撫でてやってください」

 

「ありがとうございます!」

 

 

僕はカズくんに近付き

お近づきの印に

手の甲の匂いを嗅いでもらってから

カズくんの頭に手を載せた。

 

頭を撫でてやると

とても気持ちよさそうな表情をしているように見えた。

 

思わずこちらがニヤついてしまう。

 

 

「この子、撫でられるのが大好きなんですよ(笑)」


「そうみたいですね」

 

「甘えん坊でねぇ(笑)」

 

「そこもかわいいじゃないですか!」

 

 

本音だ。

 

もしも

こんなワンちゃんに甘えられたら

僕は家から一歩も出なくなるだろう。

 

僕は立て続けに

カズくんに話しかけた。

 

「カズくん、甘えん坊なのか?」

 

「カズくん、どうして歩かないんだ? 今は休憩時間か?」

 

「カズくんの尻尾、殿様のマゲみたいだな」

 

僕はカズくんにいっぱい話しかけながら

頭を撫でていた手を

胴体の方に動かしていった。

 

と……

 

見た目ではわからなかったのだが

カズくんの胴体は

僕が思っていたよりも“ずっしり”していた。

 

 

思わず

本当に思わず

言葉が出てしまった。

 

 

「あれ? カズくん、ちょっと太いな」

 

 

信じてほしい。

そこにはなんの悪意もなかった。

 

というか

痩せてる犬よりぽっちゃりしてる方が好きなくらいだ。

 

僕にとっては褒め言葉に近い。

 

 

だがーー

 

 

それまで穏やかに

ときに笑顔を浮かべながら話をしていた飼い主さんの表情が一変し

声も悲し気なものに変わった。

 

 

「そうなのよぉ~! ここんとこ太っちゃってねぇ~(泣)」

 

 

あっ

 

しまった

 

飼い主さん

あからさまに気にしているじゃないか……

 

 

「太っちゃったのよぉ~! 痩せなきゃねぇ~(泣)」

 

「あ、いや、その、まぁ、なんというか、僕はかわいいいと思いますけどーー」

 

 

カズくんは

自分が話題の中心になっていることも知らず

相変わらず気持ちよさそうに撫でられ続けている。

 

飼い主さんは太ってしまったことをとても嘆いている。

 

妙な空気が流れた。

 

……ような気がした。

 

 

「あの、どうも、ありがとうございました」

 

 

僕はその場を立ち去ろうと

カズくんから手を離し

飼い主さんに一礼して

土手を歩き始めた。

 

するとーー

 

それまで休憩していたカズくんがすくっと立ちあがり

僕の後ろを付いてきてしまった。

 

飼い主さんが言った。

 

「あっ、付いて行っちゃう! 急に歩きが早くなった!」

 

カズくん

どうやらもっと撫でてほしかったようだ。

 

 

 *

 

 

人の言葉というのは

こうして武器となるときがある。

 

 

もしも

よそ様のワンちゃんを撫でる機会があって

 

もしも

そのワンちゃんがぽっちゃりしていたとしても

 

けっして

「あれ? ちょっと太いな」

 

なんて言わない方がいいですよ。

 

僕からのアドバイスです。

 

 

お互い

言葉の使い方に気をつけましょう。

 

 

 

 

 

では、また。