ども、自分の寿命が想像つかない岡田達也です。
昨日のつづき。
*
2017年11月
母・秀子さんが他界した。
78歳だった。
通夜や葬儀がバタバタと進んでいき
ようやく落ち着いたときだった。
父・隆夫さん(86)が口を開いた。
「お母さんがなぁ」
「……」
「亡くなるなんてなぁ」
「……」
「びっくりだなぁ」
「……」
「お父さんが先に逝けば良かったのになぁ」
僕は「うん」と言わない代わりに
首の骨が折れるかと思うほど縦に振ってみた。
「お父さんももう長くはないだろうけなぁ」
奥さんが亡くなると
残された旦那は短命になってしまうことが多いらしい。
逆の場合
奥さんは長寿になるというから皮肉なものだ。
「あとどれくらい生きる予定なの?」
「そうだなぁ」
「……」
「あと2年だ」
「……けっこう長いな」
「2年しか生きられまいなぁ」
「……」
「2年だろうやぁ」
*
繰り返す。
秀子さんが亡くなったのは2017年。
あれから間もなく4年が過ぎようとしている。
私が帰省し
食事を作るようになってから
父上の太鼓腹は引っ込み
脂肪肝が消え
お医者さんに
「よく頑張りましたね」と
どういうわけか隆夫さんが褒められた。
そう
母が亡くなってから
少しずつではあるが
隆夫さんは確実に健康になっていってる。
……ような気がしている
……少なくとも僕の目にはそう映る
だがーー
2017年以来
電話で誰かと話すたび
「私ももういつお迎えが来てもおかしくない年齢ですけなぁ! まぁ、あと2年ですわ! グフェフェフェフェ(笑)」
と、高らかに笑う姿を僕は4年間見続けている。
不思議だ……
数字が、
更新されない
4年間
ず~っと
「あと2年ですわ!」
というセリフを繰り返している
ひょっとして
秀子さんが亡くなってから
世の中の時間は止まってしまっているのだろうか?
……おかしいじゃないか?
母が亡くなってから
少しずつではあるけど
僕の白髪は増えたし
老眼も確実に進んでいるぞ
……時計の針は動いてるんじゃないのか?
*
吉恵おばちゃん(91)は言った。
「「神さま、どうかあと2年生きさせてください!」って、毎日神さまにお願いしとるだが!」
隣で聞いていた妹の多鶴子さん(81)が僕に囁いた。
「私が倉吉に来て、お姉ちゃんの面倒を見始めてから、毎日言っとんさるで」
「なんて?」
「「私もあと2年だ」って」
「……」
「かれこれ2年経つけどなぁ」
「……」
「時間は止まっとるんかなぁ?」
つづく
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