ども、持っていたい岡田達也です。

 

 

 

 

 

「モテる男」

ってのに憧れる。

 

それに負けないくらい

「持ってる男」

というのもうらやましい。

 

「ツキがある」

「幸運に恵まれている」

「巡りあわせが良い」

そんな風に思えるなんて

 

不幸や、不運に付きまとわれて生きるより

ずっとずっと良いに決まってる。

 

 

 * *

 

 

先月

 

車の洗車用具を購入するため

近所の『オートバックス』に出かけた。

 

買い物を済ませるとチケットらしきものを5枚貰った。

 

「宝くじになっております。ハズレると1枚30円のお買い物券としてご利用いただけます。当選の発表は9月2日です」

 

う~ん

宝くじねぇ

こういうの当たらないんだよなぁ

 

唯一

年末ジャンボで一等の組違い賞を当てたことがあるけど

ホントにあれだけだもんなぁ

 

あれから10年以上経つけど

何一つ当たってないし

 

結婚式でビンゴやっても

誰よりも早くリーチはかかるけど

いつまで経っても上がれない男なんだよなぁ

 

持ってないんだよなぁ

 

ま、いっか

ハズレても30円になるんだし……

 

 

 *

 

 

9月4日

 

「あっ。オートバックスの宝くじが発表になってるな。どうせハズレてるだろうけど、買い物ついでに行ってみよう」

 

家から少し離れた『オートバックス』に出かけた。

 

せっかく来たんだし

このスプレーと、拭き取り用のクロスを買っていこう

 

ま、くじは当たってないだろうから

お買い物券として使わせてもらおう

 

僕はレジに並び

店員さんに商品と宝くじを渡した。

 

 

「こちらの宝くじは当選確認されてますか?」

 

「いえ。どうせハズレてるから大丈夫です。お買物券で使わせてください」

 

「そんな、そんな! 確認しますね」

 

「ありがとうございます」

 

 

僕は、無駄な期待など、一切しない人間だ。

 

 

「お客さん!」

 

「はい」

 

「当たってます!」

 

「えっ?」

 

「特賞ではありませんが、1等ですよっ!」

 

 

おおおおおぉぉぉぉぉ!!!

 

やった!!!

 

やっちまったぜっ!!!

 

当てちまったぜっ!!!

 

実は前から薄々感じてたんだよ!

 

俺は持ってる男なんじゃないかってっ!

 

ついにその力を発揮するときがきたっ!!!

 

 

僕は内心で激しく興奮していたが

そんな様子を微塵も見せることなく

冷静さを装って言った。

 

「へ~、1等ですか。これは縁起がいいな。ちなみに何がもらえるんです?」

 

「オートバックスで使えるお買物券5,000円分ですっ!」

 

 

店員さんはわかりやすく興奮してる

 

 

「それはうれしいですね。ありがたく使わせていただきます」

 

「では、ご用意いたしますので!」

 

「お願いします」

 

 

ドキドキがとまらない

 

心の中でのガッツポーズはすでに10回を超えてる

 

そして

 

店員さんが僕に商品券を渡そうとした次の瞬間

彼女の手が止まった。

 

 

「……あれ?」

 

 

表情が曇ったのがわかる。

 

 

「どうしました?」

 

「お客様、たいへん申し上げにくいのですが……」

 

「なんでしょう?」

 

「こちらのチケットは『鳥取南店』で発行されたものですよね?」

 

 

鳥取市内にオートバックスは2軒ある。

 

我が家からちょっと離れたところにある『鳥取北店』と

我が家の近所にある『鳥取南店』。

 

先月、買い物したのは南店

今、来ているのは北店

 

これは伏線でも何でもない

ウソだと思うならもう一度頭から読み返してほしい

 

僕は、ちゃんと、書いている。

 

 

「この宝くじ、お店ごとによって違うんです」

 

「……」

 

「当店ではお使いいただけないのです」

 

 

僕は、無駄な期待など、一切しない人間だ。

 

でも、

そういう人間だからこそ、

一度上がってしまったテンションのやり場に困る

 

 

「……あぁ、はいはい、もちろん大丈夫ですよ」

 

「本当に申し訳ございません!」

 

「とんでもない! 知らずに出したこちらが悪いんです」

 

 

僕は、受け取りかけた5,000円のチケットを返した。

 

 

「……お買い物は続けられますか?」

 

「もちろんです」

 

「あの~、よろしければ鳥取南店の方に、当選番号を確認してみましょうか?」

 

「そうですね、お願いします」

 

 

数分後

 

 

店員さんはさらに曇った表情で戻ってきた。

 

「お客様ーー」

 

「はい」

 

「こちら、すべて1枚50円で使用させていただきますね」

 

「……お願いします」

 

 

 * *

 

 

「モテる男」に憧れる。

 

「持ってる男」にも憧れる。

 

でも、

僕が手に入れられるのは

 

「盛ってる男」くらいかもしれない。

 

 

 

来月こそ当たりますように。

 

 

 

 

 

では、また。