ども、今朝早くからお墓掃除を済ませた岡田達也です。

 

 

 

 

 

7月21日に腸閉塞のため緊急搬送&緊急手術&緊急入院をした

我が父・隆夫さん(86)

 

手術も無事に成功し

幸か不幸か術後の経過も良好で

 

残念ながら妹・多鶴子さん(80)の

「お兄ちゃん、もういいからね、よく生きたからね!」という叫びも届かず

 

8月2日に退院することになった。

 

 

ナースステーションへの挨拶を済まし

2人でエレベーターに乗って出口に向かった。

 

 

 *

 

 

僕は、

この時点で、

密かに心配していたことがある

 

ひょっとして、このクソ親父

車に乗った瞬間

「このままパチンコ屋まで送ってくれんか」

なんて言い出さないだろうか?

 

……という不安だった。

 

 

さすがに、

さすがにそれはないだろう、とは思う

思うし、何よりそう信じたい

 

信じたいけど

この人の場合、万が一ってことがある

 

いや、

万が一どころか、万が十くらいはあるんじゃないか?

 

いや、

万が百くらいの可能性はある気がする……

 

 

もしも、もしも

「パチンコ屋まで送ってくれ」

と言い出したら

 

隆夫さんを後ろに乗せたまま

僕は車を運転し

親子で日本海の荒波に消えてしまおう

 

達也汁読者の方たちには大変申し訳ないが

突然日記が更新されなくなったら

「あぁ、あの親子、きっと何かあったんだなぁ」

と、察していただいて

 

それから

勘の良いどなたかが

鳥取県警に

「日本海を捜索してみてください。50代と80代の親子が沈んでいる可能性が非常に高いです」と、通報してくれることを信じて

 

ついでに

映画界に強いパイプを持っているどなたかが

ドキュメンタリー映画にしてくれることを信じて

 

静かに人生という舞台の幕を閉じようーー

 

 

と、一度は決意してみたものの

 

「……いやいや、車で海に入水するのこわいしなぁ」

 

「……苦しいのキライだしなぁ」

 

「それに、なんで俺がこの人の言動によって人生を終わらせないとダメなんだ? それではあまりにも自分がかわいそうすぎるだろ」

 

と、都合よく思い直し

 

「よし。もしも「パチンコ屋に送って」と言い出したら、晩飯のおかずを小芋の煮っころがしと煮魚にしてやろう」

 

と、方針を変更した。

 

 

 *

 

 

車を走らせ始めた。

 

隆夫さんが口を開いた。

 

「あのなぁーー」

 

来たっ!

 

僕は心を固くした。

 

「一つ、気付いたことがあってなぁ」

 

「……ん? 気付いたこと?」

 

「実はなぁ」

 

「なに?」

 

「晩ごはんを食べた後になぁ」

 

「うん」

 

「寝室に行くが」

 

「うん」

 

「それからこっそりと、お菓子やら菓子パンを食べとっただが」

 

「……」

 

「こ~っそりとなぁ」

 

「……」

 

「あれがいけんかったんだと思う」

 

「……」

 

「あのせいで腸閉塞になったんだろうやぁ」

 

「……」

 

「あれはやめないけんな」

 

「……」

 

「晩ごはん食べた後におやつは食べたらいけんでなぁ」

 

 

 *

 

 

数秒間

 

僕の頭の中では

いろんな思考がよぎった。

 

良いことも

悪いことも

 

そして心の中では

「おおおおおぉぉぉぉぉぃぃぃぃぃいいいいい!!!!!」という叫び声も

「まぁまぁ」という穏やかな声も

カオスになって渦巻いていた。

 

 

そして、僕は、口を開いた。

 

「うん、そうだね。それはやめた方がいいかもね」

 

「あぁ、やめないけん」

 

「そうそう、もう痛い思いをしたくないなら」

 

「あぁ、もう懲り懲りだ。こっそり食べたらいけん」

 

「……あのさ」

 

「なんだ?」

 

「このまま家に帰っていいの?」

 

「ええで。どこかに寄るんか?」

 

「いや、お父さんが行きたいところがあるかな、と思って」

 

「ない、ない。帰って横になるわ」

 

「わかった」

 

 

僕らは

日本海に入水することなく

無事に我が家に到着した。

 

 

 *

 

 

これが

7月21日から8月2日にかけて

我が家で起こった実際の出来事。

 

それを

かいつまんで

かいつまんで

かいつまんで

間引いて

間引いて

間引いて

お届けしてみた。

 

思わぬ長編になってしまったことをお許しいただきたい。

 

 

 *

 

 

「家族とは?」

「親子とは?」

「血縁とは?」

 

僕は答えを出せないまま

永遠に縛られ続けていきていくのだろう。

 

 

何かと騒がしい親子ですが

今後もよろしくお付き合いください。

 

 

最期に

お母さん、ご心配をおかけしました。

 

大丈夫です。

貴方もご存じの通り

お父さんは、超が付くほど悪運が強い人なんです。

 

 

 

 

 

では、また。