ども、短め推進派の岡田達也です。

 

 

 

 

オリンピックの開会式で

 

IOCのバッハ会長が13分間のスピーチを行ったそうだ。

 

僕は見ていないので被害を被ってはいないが

 

しっかりと観戦していた人の多くは

 

「なげ~よ」とテレビの前で呟いていたと聞く。

 

そりゃそうだろう。

 

13分あれば短編の芝居が上演できるぞ。

 

 

 * *

 

 

高校3年生のとき。

 

始業式だったか、終業式だったか、忘れてしまったが

 

全校生徒が体育館に集まって整列していた。

 

 

普段なら校長先生が挨拶するのだけど

 

その日は出張か何かで教頭先生が代わりに挨拶するという。

 

 

もう、名前も忘れてしまった教頭先生。

 

僕は直接教わったことはなかったけど

 

かなりの強面で、恰幅も良く、とても迫力がある先生で

 

担当教科は英語だった。

 

 

ざっくり言うとーー

 

「加藤諒くんが60歳になった感じ」

 

を想像してもらえればほぼ間違いない。

 

(参考資料)

 

 

 *

 

 

教頭先生が壇上に上がった。

 

 

僕は

 

教頭が普段話しているところを見たことなかったので

 

「この人はどんな話をするのだろう?」

 

という興味と

 

「校長みたいに無駄に長い話をするのかなぁ。だったらイヤだなぁ」

 

という不安があった。

 

 

そう、

 

校長先生はいつだって話が長かった。

 

オマケに口を開けないでもぞもぞとしゃべるので

 

何を言ってるのかよくわからない。

 

当然、生徒たちからの人気は皆無だった。

 

 

 

教頭先生がマイクの前に立った。

 

先生は一呼吸置いてから

 

ハッキリとした大きな声で言った。

 

「私はっ!」

 

あまりにも大きな声だったので驚いた生徒たちは静まり返った。

 

「長い話は嫌いだっ!」

 

一瞬の静寂の後

 

生徒からやんやの歓声が沸き上がった。

 

「そうだっ!」

 

「いいぞっ!」

 

もう、これだけで生徒の心を鷲掴みにしてしまった教頭先生。

 

 

そして続けた。

 

「ただ、一言だけ言っておくっ!」

 

 

生徒は再び静まり返った。

 

「Strike while the iron is hot!」

 

 

さすが英語教師である。

 

しかし

 

とても残念なことに

 

おバカの集まりだった鳥取工業高校の生徒たちに訳せるわけがない。

 

(今はレベルが高いそうです。念のため)

 

 

だが

 

教頭先生は生徒がバカなことも心得ていた。

 

「「鉄は熱いうちに打て」という意味だっ!」

 

 

生徒たちが「なるほど」と感心する間もなく

 

教頭先生は

 

「以上っ!」

 

と言って壇上を降りた。

 

 

その瞬間ーー

 

体育館は大歓声に包まれた。

 

「素晴らしいっ!」

 

「短いっ!」

 

「わかりやすい!」

 

「これからは教頭先生が挨拶してください!」

 

 

残念ながら

 

それが教頭先生のスピーチを聞いた最後になってしまったけど

 

今でも忘れられない。

 

あれは名スピーチだった。

 

 

 * *

 

 

バッハさん

 

あくまでも僕の経験上ですが

 

話は短い方が人の心を掴めますよ

 

ご参考までに。

 

 

 

 

 

では、また。

 

 

 

 

追伸

 

 

「鉄は熱いうちに打て」という言葉には

 

「若いうちに鍛えておけ」という意味合いがありますが

 

英訳の

 

「Strike while the iron is hot」の場合は

 

対処できるうちに(手遅れにならないうちに)やっておけ」という意味だそうです。

 

つまり

 

細かい話をするなら

 

日本語のことわざが含む「若いうちに~」という意味合いは特に無いそうです。

 

でも、教頭先生はそう言いたかったんだろうな、と今でも思ってます。