ども、欲してばかりの岡田達也です。
「ないものねだりをしてはいけないよ」
明治34年(1901年)生まれのおばあちゃんに、何度も言われて育ってきた。
できることならそうありたいとは思う。
思うけれど
僕は欲深く、いつだって煩悩に左右され
オマケに弱い人間なので
なかなかその心境に達することができないでいる。
* *
昨日、美容院に行った。
これからしばらくの間は舞台の予定もないので
思い切ってイメチェンしてみようと思い
お店に行く前にヘアカタログを検索し
いつも担当してくれているコーキくんに1枚の写真を見せた。
「こんな髪型にしてみたいんだけど……」
コーキくんが、ちょっとだけ言い淀んだ気がした。
「……あぁ、はいはい、スパイラルパーマでウルフっぽい感じですね?」
僕は慌てて弁解した。
「いやいや! 絶対にこんなふうにしてほしいとは思ってないよ! 今までの経験上、髪の質も、量も、生え方も違うんだから、写真と一緒になるわけないって知ってるよ!」
「(笑)」
「「こんな風にしてください」って言って写真を見せても、「おまえなぁ、鏡を見てから言えよ!」って美容師さんがみんな思ってるのも知ってるよ!」
「いやいや(笑)」
「だいいたいこのモデルさん、めっちゃ男前だし!」
「そうですね(笑)」
「おれ、53歳だし!」
「年齢は関係ないでしょ?(笑)」
「だからね、同じ髪型は無理でも、近しいスタイルは可能かな?って相談したいの!」
コーキくんは3秒、考えた。
「岡田さん、毎日セットする自信あります?」
「……」
「岡田さんがいつも注文してくるのは、「普段何もしない」」「洗いっぱなしでいいスタイル」じゃないですか?」
「うん、だって、本番中は髪の毛いじるから、普段は何もしたくないし」
「でしょ? でもね、岡田さんは強力な縮毛なんですよね」
「知ってる」
中学生のとき「おまえの髪の毛はスチールウールみたいだな」と言われたこともあるくらいだ
「岡田さんがこのパーマかけたら、爆発しますよ」
「……ば、ば、ばくはつ?」
「えぇ、ボリューム満点になります」
「アフロみたいってこと?」
「保証します」
「……」
「でも、毎朝、ワックス使ってきっちりスタイリングするなら、近いものにはなりますよ」
今度は、僕が3秒考えた。
「いつもと同じでいいです」
「縮毛矯正ですね? かしこまりました」
* *
中学生になるまでサラサラの直毛だったのに
思春期を迎えたころ
突然スチールウールになってしまった僕の髪の毛
おばあちゃん
これは“持っていたものを失ってしまったパターン”ですが
これもないものねだりになるんでしょうか?
……ですよね
今は持ってないですからね
40年以上前の自分の髪の毛を欲しているなんて
やっぱり僕は欲の皮が張ってるようです。
では、また。
