ども、転がり続けた岡田達也です。
「弄(もてあそ)ばれる」
「弄ぶ」の受身形
つまり“自分が思いのままにされていること”を指す。
思い起せば
僕は
父・隆夫さんに弄ばれ
芝居の神様に弄ばれ、と
人生のところどころで弄ばれてきた。
もう、十分だ
これ以上、誰かの意のままに動くなんてまっぴらごめんだ
いつもそう思っているのだけど……
*
毎年、人間ドックのあとは同じことを書いてしまう。
それくらい、胃のバリウム検査というのは
なんというか、こう、
僕にとっては「弄ばれてる感満載」なのだ。
*
僕と同じくらいの年齢の検査技師さん(男性)の方だった。
なんだか見覚えがあるような、と思っているとーー
「岡田さん、去年も担当しました○○です。よろしくお願いします(笑)」
と、挨拶された。
……やっぱりそうだ
確かにこの人だったよ
柔らかな表情と、柔らかな声なのに
その注文はとても派手で、厳しくて
完全に弄ばれてしまうんだよな……
*
「は~いっ! このカップの半分のバリウムをお口に含んでっ!」
これがビールならどんなに幸せだろう?
そう思いながら僕は口に含んだ
「一気に飲んでみましょう! よいしょ~っ、と!」
……祭りか?
これは祭りなのか?
とにかく飲もう
飲まなければこの時間は終わらないのだから
「いいですね~、いいですね~!」
……太鼓持ちか?
あなたは太鼓持ちなのか?
「さぁ、今度は残りの半分をお口に含んで!」
僕は口に入れた
「い~き~ま~す~よ~!」
……確かにバリウムは飲みずらいものだけど
そこまでの掛け声をいただかなくても喉を越せますよ
もう大人ですし
「よいしょっ、と!」
僕は飲んだ。
「いいですね~、いいですね~!」
「……」
「さぁ、それでは右の腰を持ち上げて! よいしょっと! そして、そちら側からうつ伏せになって! そうです、そうです! 腹ばいですね! そして、そのまま回り続けて! 最後は私を見てください!」
……「左回りで1回転してください」ではダメなんだろうか?
「さぁ、今度は頭が下がりますよ! かなり危険な角度になりますので、肩にバーを当ててブロックしますねっ!」
……これだ
去年初めて体験した角度だったけど
まるで高飛び込みしてるかのような危険な角度で
「これ、高齢者の方は耐えられるんだろうか?」と、心配になったやつだ。
「じゃぁ、いきますよ~!」
台が傾き始めた
頭に血が上る
「しっかりとバーを握っててくださいね!」
……言われなくても握りますよ
そうしてなければバーが肩に食い込んで痛いですもん
「いいですよ~!」
……何がいいんだろう?
僕はただ歯を食いしばって耐えてるだけなのに
「は~いっ! 左の腰を浮かしてください!」
浮かした
「ああっ! ちょっと行き過ぎですっ! ちょい戻しでっ!」
戻した
「ああっ! 戻し過ぎですっ! ちょい浮かしましょう!」
浮かした
「ああっ! ちょっと行き過ぎですっ!」
……そりゃね、こちらも隅々まで見てほしいから頑張りますよ
頑張りますけど、心が折れそうなんですけど
「そうです、そうです! 上手! 上手ですね~!」
……悪気は無いのはわかってるけど
なんだか馬鹿にされてるような気がしてしまうのは僕だけだろうか?
そうこうしていると
「は~いっ! 終わりましょう! お疲れ様でした! とても上手でしたよ!」
「……」
○○さんは笑顔で言った。
「また来年もお待ちしていますね!」
……来年?
強制的に?
「……はぁ」
僕はあいまいな返事をして部屋を出た。
強制的に来年の約束までさせられるなんて
やはりX線の検査は僕を弄ぶようだ。
愛称が悪い
* * *
おかげさまでキレイな胃だそうです。
その他の結果も概ね満足いくものだったので
(除く尿酸値)
これからも「日本一若い53歳」を掲げて頑張っていきます。
みなさまも、どうか健康でありますように!
では、また。