ども、3つ星シェフの岡田達也です。
昨日
父・隆夫さんを、ちょっと大きめの総合病院に連れて行った。
毎月1回、かかりつけのお医者さんに出かけて定期健診を受けているのだが
「ちょっと肝臓に気になる部分がある」と言われ
詳しく検査をしてみましょうということで、紹介状を書いてもらっていたのだ。
隆夫さんは85歳。
いくら、毎日のようにパチンコに出かけ
恵方巻をリクエストしてくるほど食欲があるとは言え
バリバリの後期高齢者である。
いつ身体にガタが来たっておかしくないお年頃だ。
厳しい結果となっても仕方がない。
いや、むしろ、その覚悟を持っておくべきだろう。
そう思って隆夫さんに付き添い
CT(X線検査)を受けさせ
検査結果を待っていた。
*
看護師さんに呼ばれ、診察室に入った。
僕よりも20歳ほど年配の男性医師が待っていた。
「これをご覧ください」
モニター画面には、2枚の、CT画像が映し出されていた。
「下の段が2年前に撮影した肝臓のCTです。そして上が今回撮影したものです」
2年前にも同じ検査を受けていたらしい。
その資料と比較しながらの話になるようだ。
ところがーー
隆夫さんは耳が遠いことを理由に、お医者さんの話を聞く気がない。
「おまえが聞いておきなさい。それが息子の仕事だ」
と言わんばかりに、ニコニコしながら遠くを見ている。
父の代わりに、僕は身を固くして返事をした。
「はい」
「2年前のCTを見てください。肝臓が全体的に黒いでしょう?」
「はい」
「そして大きい。わかりますか?」
「はい、わかります」
「これは脂肪肝を発症しています」
なるほど……
2年前にはすでに脂肪肝になっていたのか
それは知らなかったぞ
う~ん
この2年でいろいろ進行してしまった可能性もあるな……
僕はいよいよ覚悟を決めた。
「中性脂肪が肝臓に溜まっている状態ですね。これが進行すれば、肝硬変や、肝臓がんなどになりやすいのです」
「はい。母がB型肝炎で、最後は肝硬変を患っていたのでよくわかります」
「なるほど。で、こちらが今回のCTですがーー」
「はい」
「色が白くなってるのがおわかりですか?」
「はい」
「それに大きさが小さくなってるでしょう?」
「はい」
素人目にも2年前の画像とは全く違う。
これは
何らかの理由で
肝臓が縮んでしまっているのだろうか……?
イヤな予感は倍増した。
しかしーー
意外な言葉が聞こえてきた。
「これね、脂肪肝が治ってます」
「???」
「とてもキレイな肝臓になってます」
「???」
「2年前とは比較にならないほど、健康でキレイな肝臓になってます」
「???」
「しっかり改善をされたんですね(笑)」
「???」
「運動されたとか、食事を変えたとか」
*
……キレイで健康な肝臓になってる???
……2年前とは比較にならないほど???
……しっかり改善???
……2年前???
……2年
……2
おおおおおぉぉぉぉぉいいいいいぃぃぃぃぃ!!!!!
おおおおおぉぉぉぉぉいいいいいぃぃぃぃぃ!!!!!
おおおおおぉぉぉぉぉいいいいいぃぃぃぃぃ!!!!!
2年前って言えば!
僕が実家に帰ったタイミングですよね?
つまり!
僕が父親の食事を作るようになったのが2年前なんですよ!
それからの2年間で!
脂肪肝が治ったってことは!
これは!
偶然の一致じゃないですよね!
私の食事で!
寿命が延びたんですかっ???
延びてしまったんですかっ???
……
……
「腫瘍も見つかりませんでしたし、問題ないでしょう」
「はぁ」
「念のために超音波でも検査しておきましょうね」
隆夫さんはここでようやく発言した。
「はいはい、脱げば良いですか?」
* *
信憑性が薄く聞こえるかもしれないがーー
僕は隆夫さんには長生きしてほしいと思っている。
しかし
僕が食事を作ることによって
父の寿命が
あと40年とか延びるのは困る。
125歳の隆夫さんの面倒を
92歳の僕がみている……
想像しただけでおそろしいわ
*
定期的な検診と
適度な食事というのは大切ですね。
では、また。