ども、はとバスツアーの充実ぶりに驚いた岡田達也です。

 

 

 

 

 

一昨日

 

父・隆夫さんに「日本語の使い方」をレクチャーした。

 

晩ごはんのメニューをオーダーするときは

「○○でええで」ではなくて

「○○をお願いします」にしてみよう、と。

 

 

昨日の朝

 

隆夫さんは言った。

「今夜は天丼が食べたいです」

 

すばらしい

 

なんて進歩なんだ

 

父よ

 

やればできるじゃないか

 

僕は褒めちぎった。

「いいよ、いいよ! その調子だよっ! 気持ちいいよっ! 天丼ね! 任せてよっ! 『てんや』に負けないくらいの天丼作るよっ!」

 

まだ二日目なので何ともいえないが

もしもこの習慣が身に付いてくれたら

僕は母・秀子さんの遺影に手を合わせ、泣きながら報告しようと思う。

 

 

 *

 

 

「……『てんや』って何だ?」

 

あ、そうか

 

鳥取にはてんやはないもんな

 

「天丼のチェーン店でね。安くて美味しいお店があるのよ」

 

「ふ~ん。天丼のお店か」

 

「そう」

 

「そういえば、昔、東京に行ったとき、浅草でお母さんと天丼食べたなぁ」

 

 

あれは何年前だったろうか?

 

両親を東京に呼んで、はとバスツアーに参加したことがある。

 

そのときの昼食が浅草の『大黒屋』という、老舗の天ぷら屋だった。

 

きっとその思い出が残ってるんだな

 

結局、家族揃って旅行らしいことをしたのはあれが最後になったもんな

 

あのとき隆夫さんは「東京かぁ、めんどくさいなぁ」とボヤいていたけど、無理して呼んで良かったよ

 

良い思い出じゃないか……

 

 

「(嫌そうに)あんときなぁ、天丼が千何百円もしてなぁ」
 

「いやいや、そんなもんだよ」

 

「おいしかったけどなぁ、千何百円も払ってなぁ」

 

「……ちょっと待って。お父さんは払ってないよね?」

 

「え?」

 

「だって、はとバスツアーの中にその料金は込みになってるんだから」

 

「そうかえ?」

 

「そうだよ、あれは俺が2人を招待したんだから。俺が払ったの」

 

「……」

 

「……」

 

「(残念そうに)浅草は天丼屋しかなかったなぁ」

 

 

ちょいちょいちょい

 

聞いてるか、人の話?

 

記憶が違ってきてるのは、よくあることだから気にしなくていいんだよ

 

素直に「あ、そうだったか」でいいし

 

別に恩着せがましいことを言いたいわけじゃないけど

なんなら「あんときはごちそうさまでした」のオマケがあってもいいくらいだよ

 

なのに、なんで浅草の話にすり替える?

 

しかも「浅草は天丼屋しかなかった」なんて、それこそ記憶障害だろ?

 

浅草に失礼だぞ

 

 

「あのね、浅草は天丼屋だけじゃないよ」

 

「そうかいな? 天丼屋しか見かけんかったなぁ」

 

「……どこ見て歩いてたの?」

 

「天丼屋」

 

「……」

 

「美味しかったけどなぁ。千何百円もしたなぁ」

 

 
 *

 

 

お母さん

 

どうやら隆夫さんにはあのときの記憶が“良き思い出”としてしっかり刻まれているようです

 

多少、記憶の中身がおかしなことになってますが、

それを差し引いても、今こんな会話ができてることはありがたいです

 

よくぞ渋ってる隆夫さんを説得して東京まで連れてきてくれました

 

ありがとうね

 

 

う~ん

何年前だろう?

 

さっぱり思い出せない

 

息子も記憶障害の道を着実に進んでます

 

 

 

 

 

では、また。

 

 

 

追伸

 

明日の日記はお休みします。