ども、オロナミン派の岡田達也です。

 

 

 

 

 

2ほど年前

 

母・秀子さんの容体が悪化して、慌てて帰省したときのこと。

 

父・隆夫さんが栄養ドリンクを飲むようになっていた。

 

それまでそんなもの飲んでいなかった人なので、その姿は僕にはとても意外だった。

 

だけど……

 

よく考えてみたら、秀子さんの看病疲れもあったのだろうし

 

さすがにこのときばかりは食欲も落ちていたみたいだし

 

隆夫さんが栄養ドリンクに頼ろうとした気持ちも理解できる。

 

 

 * *

 

 

一昔前

 

演劇界での差し入れと言えば栄養ドリンクが文句なしの1位だった。

 

『リポビタンD』

『アリナミンV』

『リゲイン』

『新グロモント』

『ユンケル』

etc

 

演劇のケータリングコーナーは、千穐楽に向かうにつれ「ここはドラッグストアか?」と言いたくなるほど、栄養ドリンクが充実していったものだった。

 

(今は『レッドブル』や『モンスター』などのエナジードリンクにその位置を奪われているけど)

 

 

さておき。

 

僕は栄養ドリンクを飲まない人だ。

 

かかりつけのお医者さんに

「栄養ドリンクはカフェインを多く含み、最終的には肝臓で分解されます」

 

「ただでさえ毎日アルコールを摂取し、おまけにコーヒーも好きな岡田さんは、いつだって肝臓をフル活動させているので、これ以上肝臓に負担をかけたくないなら飲まない方が良いですよ」

という貴重なアドバイスを頂いてからは、まったく口にしなくなった。

 

てか

 

そもそも僕は、栄養ドリンクを飲んでもその効果を感じたことがない。

 

ついでに言えば、レッドブルを飲んでも“羽が生えるほど”の体調の変化を感じたことがない。

 

おそらくいろんな意味で鈍いのだと思われる。

 

だから、本番前は大好きな『オロナミンC』を飲むようにしている。

 

 

 * *

 

 

あれから2年

 

母が亡くなったら父は栄養ドリンクを止めるだろうと、僕は勝手に思っていたのだけど、隆夫さんはあれ以来、毎日飲むようになった。

 

なってしまった。

 

完全な日課。

 

しかも、毎日1~2本。

 

パチンコ打つだけのおじぃさんに、果たして栄養ドリンクが必要なのだろうか?

 

そもそも過剰な摂取はカフェイン中毒になるんじゃないのか?

 

ひょっとすると、すでに中毒なんだろうか?

 

心配した僕は何度か隆夫さんに言った。

「栄養ドリンクの飲み過ぎは良くないよ」と。

 

隆夫さんは言った。

「でもなぁ、これを飲むと元気になるだが」

 

そう言われてしまったら返す言葉もない。

 

僕は毎週、父の栄養ドリンクを買いに行った。

 

 

 *

 

 

2週間ほど前

 

突然、隆夫さんが宣言した。

「しばらく栄養ドリンクはやめてみるわ」

 

おおっ!

突然、どうした?

 

「なんかなぁーー」

 

「何?」

 

「気のせいな気がする」

 

「何が?」

 

「元気になるの」

 

……ちょいちょいちょい

 

「これ飲むと元気になる」って断言してたよね?

 

「それになぁ」

 

「?」

 

「肝臓に負担があるって言いよったが?」

 

「うん、飲み過ぎはダメらしいよ」

 

「試しになぁ、やめてみるわ」

 

「……」

 

 

 *

 

 

昨日

 

「そう言えば、栄養ドリンク飲んでないけど、調子はどう?」

 

「調子はええで。自転車で転んだけどなぁ」

 

「……それと栄養ドリンクは関係ないから」

 

「そうか」

 

「じゃ、もう買わなくてもいいのね?」

 

「いらん、いらん!」

 

「そう」

 

「あれはなぁ、気のせいだ」

 

「(笑)」

 

「飲んだら元気になったような気がするだけだ!」

 

僕は安心して言った。

「(笑)。それもプラシーボ効果かもね」

 

「プラッシー? えぇ、えぇ! 買わんでええって!」 
 

「……」

 

 

 *

 

 

聴力が回復するドリンクがあれば毎日飲ませてあげるのになぁ

 

 

 

 

 

では、また。