ども、2年前までは低血圧だった岡田達也です。

 

 

 

 

 

昨日のつづき。

 

 

  *

 

 

父・隆夫さんから

「自転車でひっくり返った。すぐに来てほしい」

とSOSの電話が入った。

 

 

昔、祖母が自転車で転倒した時は見事に骨折してしまった。

 

歳を取ると、骨が弱くなるらしい。

 

隆夫さんは大丈夫なんだろうか?

 

骨だけじゃなく、頭は打ってないだろうか?

 

父が今以上おかしくなったら、僕は旅に出るしかない。

 

いや、しかし……

 

本人からの電話だし、声もしっかりしている。

 

大丈夫だと信じたい。

 

が、とにかく顔を見るまでは安心できない。

 

さすがに心配だ。

 

 

僕は隆夫さんが待つパチンコ屋に向かった。

 

 

 *

 

 

車をパチンコ屋の脇に止め、駐輪場に向かった。

 

 

いた。

 

 

自転車の横で

平成のヤンキーのように

見事なウンコ座りを決めて

あごをマスクで押さえている

85歳の老人が

 

あれが、我が父なのか……

 

僕の胸に何ともいえない感情が沸き起こったが

そんなことよりも安否の確認だ。

 

 

「大丈夫?」

 

「あぁ、ちょっとあごをすりむいたけどなぁ」

 

「頭は?」

 

「打ってないで」

 

「どこで、どうなったの?」

 

「(駐輪場の出口を指さし)そこがちょっと凹んどうろうが。前輪がはまったみたいでなぁ」

 

「で?」

 

「ひっくり返っただが。自転車でひっくり返るとはなぁ。歳取るといけんなぁ」

 

「痛みは?」

 

「ないで。まさか自転車でひっくり返るとはなぁ。歳取るといけんなぁ」

 

 

それはさっきも聞いたよ

 

 

「病院は? 行かなくてもいいの?」

 

「ええっ! ええっ!」

 

 

この人は、僕に対して、なぜ、この撥ねつけるような物言いしかできないのだろう?

 

こちらの神経を逆なでする、この返事の仕方さえしなければもう少し可愛い気があるのに

 

 

と、そこへ女性店員の方が通りかかった。

 

どうやらその人は事の顛末を知っていたらしく、心配そうに隆夫さんをのぞき込み言った。

 

 

「大丈夫ですか? お店で休んでいかれます?」

 

「いえ、息子が来たのでもう大丈夫です」

 

「病院は行かれますか?」

 

「ありがとうございます(笑)。大丈夫ですのでご心配なく(笑)」

 

 

 *

 

 

おおおぉぉぉぃぃぃいいい!!!

おおおぉぉぉぃぃぃいいい!!!

おおおぉぉぉぃぃぃいいい!!!

 

く、そ、お、や、じ、さ、ん、よぉ!!!

 

それでいいんだよ、それでよぉぉぉおおお!!!

 

他人様にはちゃんと言えてるじゃね~か!!!

 

しかも、ワンセンテンスに一つずつ笑顔付きかよっ!!!

 

すげ~、サービス精神ですよねぇぇぇ???

 

息子にも同じように「ありがとな。でも大丈夫」って言ってくれりゃ、こっちももう少し優しくできるってもんだろうがっっっ!!!

 

なんで「ええっ! ええっ!」って突っぱねるんだよ!!!

 

きっとその原因は

昔から

祖母や、母・秀子さんや、兄妹や、俺など

多くの身内や親族から耳に痛い言葉をたくさん投げつけられた経験があるから

何か言われるのを防ごうとする防衛本能が壁を作ってるのはわかるけど

 

そもそも

何か注意されるようなことばかりしてきたのはそっちだかんな!!!

 

どれもこれも、あんたの生き方が甘いから怒られてきたんだろうがっっっ!!!

 

……

……

 

僕は自身のことを、割と冷静な人間だと認識しているが

この人を相手にしていると、心の奥深くに眠る何かが壊れそうになる。

 

 

血圧が上がっている。

 

 

 *

 

 

女性店員さんが去ったあと、隆夫さんが言った。

 

 

「自転車でひっくり返るとはなぁ。歳取るといけんなぁ」

 

「……」

 

「それでなぁ」

 

「何?」

 

「自転車が壊れただが」

 

 

僕はそばに置いてある自転車を見た。

 

どこも壊れていない。

 

ただ、サドルが少し横を向いてしまってるだけだ。

 

 

「新しいのを買わないけんなぁ」

 

 

でた。

 

これだ。

 

僕はサドルの向きを直し、自転車を動かして見せた。

 

 

「どこも壊れてないよ」

 

 

隆夫さんは何もできない。

 

電球の取り換えすらできない人だ。


物が壊れようが、直すという発想がない人だ。

 

令和の殿様と言っていい人だ。

 

自転車のサドルが横を向いただけで、自転車は壊れたと判断される。

 

総じて

隆夫さんに関わるすべての物は、寿命を全うすることなく短命に終わる傾向にある。

 

 

「あぁ、そうか! 壊れてないか」

 

「……」

 

「でもなぁーー」

 

「何?」

 

「自転車も持って帰らないけんなぁ」

 

「……」

 

 

この「自転車も持って帰らないけんなぁ」の意味が、みなさんに理解してもらえるだろうか?

 

 

明日までに読み解いてみてください。

 

 

 

 

 

つづく

 

 

 

 

 

追伸その1

 

明日の更新は少し遅い時間になると思います。

 

 

 

追伸その2

 

鳥取オンラインツアー

『鳥取県知事への道~整備中~』

 

 

おかげさまで満員御礼となりました!

 

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本当に、本当に、ありがとうございます!

 

Gotoトラベルキャンペーンとは何の関係もないので、まさか完売するとは思ってもいませんでした!

 

素直に嬉しいです!

 

当日、精一杯ホストを務めさせていただきますのでよろしくお願いします!