ども、飾られた岡田達也です。

 

 

 

 

 

父・隆夫さんの朝食は

・トースト半分

・フルーツたっぷり

・カフェオレ

と決まっている。

 

1年365日変わらぬメニューを食べているのだけど、フルーツの中身はちょいちょいマイナーチェンジされる。

 

基本的には缶詰が多いが、たまにリンゴやバナナを買ってきては、それを剝いて食べている。

 

バナナを買ってくるのはいい。

好きに食べてくれればいい。

 

ただ……

 

きまってそのバナナにビニールひもを縛り付け、キッチンの吊戸棚(上にある収納)の取手から吊るすのだ。

 

するとどうなるか?

 

そう

僕は、台所に立って調理をするとき、いつも、必ず、バナナに、頭をぶつける。

 

「……」

 

そして

この、頭をぶつけた直後の「……」の部分で、得も言われぬ感情が巻き起こる。

 

隆夫さんの好きなものを一生懸命に作ってる最中に

隆夫さんが吊るしたバナナに頭をぶつけるという実に滑稽な自分

 

「……」

 

これは、怒りなのか、やるせなさなのか、切なさなのか?

 

自分でも判断が付かないが、少なくとも喜ばしい感情ではない。

 

かと言って、父に悪気があるわけじゃない。

 

ただ「バナナの保存は吊るしておくのが良い」という話を聞いて、それを実行しているだけだ。

 

僕は、あの“言葉にならない感情が再び湧きおこらないためにはどうすればいいか?”

 

考えた上、ネットでバナナスタンドを購入することにした。

 

 

 

しかし……

 

悲しいかな

このスタンドを購入した途端、隆夫さんのバナナブームは過ぎ去り

このスタンドはキッチンで静かに置きっぱなしになっていた。

 

 

 *

 

 

昨日

 

僕が帰宅して、お気に入りのハットを脱ぎ、いつもの場所に置いた。

 

すると……

 

隆夫さんが突然

「おっ! 良いこと思いついた!」

と言いながら台所へ向かった。

 

そしてーー

 

 

おもむろに僕の帽子をバナナスタンドに引っ掛け、こう言った。

 

「これは、ええでないか?」

 

「……」

 

「実はな、前々から、こうするとええじゃないかと思っとっただ(笑)」

 

「……」

 

「うん、ええなぁ」

 

「……」

 

「ええセンスだ」

 

「……」

 

 

僕は、また、違った種類の、得も言われぬ感情が巻き起こった。

 

 

 

 

 

では、また。